『機動戦士ガンダム』 ハリウッド実写映画化に見る“世界戦略”

アニメビジネスの「未来を占う」
数土 直志 プロフィール

もうひとつの巨大市場、中国

ガンダムのグローバル戦略は、もうひとつの巨大市場・中国攻略でも活発に動き出している。実写「ガンダム」は、Netflixだけでなく、中国配給も言及されている。

Netflixがカバーしない中国は、レジェンダリーが映画公開を目指す。中国企業の出資も受けるレジェンダリーは、中国ビジネスを得意とする。実写「ガンダム」は中国市場も重視しているのだ。

ガンダム人気は、現在は米国より中国のほうがはるかに高い。シリーズのテレビ放送や配信もない90年代から、街中には海賊版グッズが溢れていた。時代は移り、中国でも正規版がより好まれるようになっている。いまでは金払いのいい熱心なファンが多くいる魅力的なマーケットだ。正規のガンプラが積極的に輸出され、いまでは中国限定ガンプラまで発売されている。

21年4月には上海のショッピングセンターに「ガンダムSEED」に登場した実物大フリーダムガンダム立像が登場した。実物大ガンダムの建設は日本以外では初となる。実際にバンダイナムコは海外の重点地域として、経営計画で北米と並び中国を挙げている。

photo by gettyimages
 

なぜガンダムなのか? シリーズの利点

活発化するガンダムの世界戦略だが、なぜ他の作品でなくガンダムなのだろうか。バンダイナムコのグループの作品別売上げでは1200億円を超える「ドラゴンボール」のほうが大きい。他にもゲームや玩具の好調な「ワンピース」、「ナルト」といったビッグコンテンツもある。

そんな中でやはり「ガンダム」に力を入れるのはバンダイナムコが自分たちで原作から生み出すオリジナルコンテンツだからだ。バンダイナムコは2019年にアニメライセンス管理の創通を350億円で買収した。同社がガンダムのライセンスの一部を持っていたからだ。 買収金額は大きいが、これでガンダムのライセンスは全てバンダイナムコ傘下に置かれる。

映像ソフト、ガンプラ、玩具、ゲーム、タイアップ…、作品から生み出される利益は直接グループ各社に結びつく。ガンダムは他の作品に比べて収益性の高いコンテンツである。

ドラゴンボールやワンピース、ナルトの売上高は大きいが、そこには原作者や出版社、グループ以外のアニメスタジオが関わる。グローバルビジネス展開は、バンダイナムコだけでできるものではない。グループ内で全てが完結するガンダムは、バンダイナムコが世界を目指すときに最もコントロールもしやすい作品なのである。

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