母親の胎内で稀に起こりうる双子特有の病気「双胎間輸血症候群」。妊娠を専門分野とする中田雅彦医師が日本生命のCMで見たスケートに打ち込む女の子は、15年前にこの病気で中田医師が手術を行った双子のひとりだった。
出産ジャーナリストの河合蘭さんがその少女・樽井美侑さんの母親・美沙さんと中田医師にお話を伺った後編は、胎児手術の力及ばず胎内死亡となった結美さんと、生まれてくることができた美侑さんとの結びつき、そしていまこうして美侑さんが健やかにいる、その背景となった胎児治療についてお届けする。

胎児治療によって無事に生まれることができた美侑さん。小学校卒業式の日に撮影 写真提供/樽井美沙さん
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CMのインタビューでわかった、
美侑さんの世界にいる結美さんの存在

樽井さん家族は、生活の中で、自然に結美さんの存在に触れてきた。
「事あるごとに、結美の存在の話が出ていたので、美侑は小さい頃から自分が双子だった事は知っていました。そして私は、生まれてこられなかった結美の話をするときは『美侑が健康に今、過ごせている事は当たり前ではないんだよ』と言ったり『結美はいつも美侑の心の中にいるんだから、あなたは2人分の力を持ってるはずだよ』と話して命の大切さ伝えようとしてきました」

ただ、樽井さんは、最近まで、美侑さんの心の中にどんなふうに結美さんが居るのかを聞く機会はなかった。今回、美侑さんが日本生命からインタビューを受けた時、樽井さんはその傍らで初めて美侑さんの世界にいる結美さんの存在に気づいた。

中学生になった最近の美侑さん。目標は冬季オリンピックへの出場 写真提供/樽井美沙さん

「美侑は、インタビュアーの方に『妹さんの存在を感じることがありますか』と聞かれてこう言ったんです。『大会で緊張した時に、ふと落ちつくことがあるんです。そんな時は結美ちゃんがそばにいてくれるのかなあと思う。急に力が出て来ることもあります』って」
出来上がって来たコマーシャル映像では、美侑さんが鏡を見たり、夜の車窓に自分の顔を映したりすることによって、本当は見えないはずの結美さんが可視化されるという幻想的なシーンが繰り返される。 結美さんの存在を感じさせるシーンはすべて美侑さんがひとりでいる設定で、かつて樽井さんのお腹の中にあった2人だけの世界が今も続いていることを暗示していた。

 日本生命TVCM映像より 写真提供/日本生命
日本生命TVCM映像より 写真提供/日本生命
日本生命TVCM映像より 写真提供/日本生命