# 音楽

『ボヘミアン・ラプソディ』、ラストまで「仕掛け」だらけの凄い映画だった!

「コンプレックス・ソング」の魅力とは
菅原 裕子 プロフィール

演奏が終わり、フレディはステージ上から投げキッスを送る。実はこれは母親に向けたもので、テレビ中継で見ていてくれと公演前に約束をしたのだ。スクリーンは次に、リビングルームにいる母親を映し出し、彼女がそれをしっかりと受け止めたことを描く。

この温かい親子の交流、彼らの「秘密」を知りえるのは、実は私たち映画の観客だけなのである。ウェンブリーの観客も全世界の視聴者も、自分に向けられたキッスだと思っているだろう。心情的に通じているとはいえ、母子当人たちさえその場で思いが届いたかどうか確認することはできない。

傍観者としてスタートし、ライヴエイドが始まった途端、会場に迷い込んだ観客へと変容した私たちは、しかし彼らの「目撃者」となることで、再び自分たちが映画の観客として傍観者――しかし重要な「目撃者」――でもあるとあらためて気づかされるのである。

映画と観客をつなぐダイナミクス。まるでフレディと秘密を共有したようではないか。彼とのつながりや共感を呼び起こす点も、本作が愛される理由の一つだ。

そしてこれはエンディングに向けての心憎い仕掛けの始まりに過ぎない。映画の本当の「変奏」は、実はこれからだ。

 

クレジットロールに隠された「最後の仕掛け」

ライヴエイドのステージの幕引きと共にフレディの半生を描いた物語は終わる。手を振りながらステージを去っていく彼らをカメラはスローモーションでとらえ、そこに「Don’t Stop Me Now」が重なる。若さと活気に溢れた代表曲の一つだ。これだけで涙腺決壊である。

 

そしてフレディ本人の写真と共に、1991年に45歳の若さで亡くなったことを告げるキャプションが入り、恋人や家族、メンバーたちと一緒に写っているプライベートやライブでの写真が続く。

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