トニー・シェイ〔Zappos.com CEO〕アマゾンが欲しがった靴のネット通販経営者はツイッターフォロワー170万人をどう生かしたか

セオリー

 最大の理由はカスタマーに24時間電話対応するには、各社のコールセンターが立地している不夜城ラスベガスが抱える人的資源と環境が必要と判断したためだ。それがコア業務だから、他社によく見られる海外へのアウトソーシングなどは最初から論外だった。

「他の会社には"カスタマー・サービス"という部署がよくありますが、ザッポスにとって顧客サービスは"会社としての使命"そのものなのです」

 同じネット小売業ではあるが、人間のサービスは、ハイテクがフリクション(摩擦)を排除できないときにのみ出番となると考えるアマゾンは、ITシステムの作り込みに注力して、今では誰もが認める見事なインターフェースを作り上げた。

 一方のザッポスは、「ワオ! (Wow!)」と叫び出すような顧客との感動共有を目指していて、アプローチが180度違う。その端的な違いは、アマゾンのサイトには直接コンタクトするための電話番号がなかなか見当たらないが、一方のザッポスのサイトには一番目立つ場所に電話番号が大きく記載されていることにも表れている。

 ネット上だけの通販ビジネスは、人と関わりなく無味乾燥な取引になりがちだが、あくまでも個々の顧客との信頼関係を深めることで、ここまで急速に飛躍できたのだ。

トニーら役員の席が並ぶ通称"モンキー通り"。見学客に「ここは役員席です」と説明しても反応がないため、ある日「ここはサル山です」と言ったらバカ受け。以来、飾り付けもジャングル風となり現在に至る

「だからザッポスでは、ケンタッキーの配送センター(従業員1189人)以上に、ラスベガスの本部871人の従業員中の半数を占めるコンタクトセンターが文字通り企業の生命線なのです」

 顧客対応には、電話のみならずメールやライブチャットによるコンタクトも含まれる。ザッポスらしいのは、各社員の自由裁量が100%認められ、一顧客処理時間の上限などの行動指針は最初からないことだ。売り上げノルマもない。

 必要なのは、客の靴選びへの心のこもった真摯な対応であり、「幸せのデリバリー」を感じさせてお客をリピートさせることが最終目的だ。

 だからコストのことなど考えずに、肉親の死を嘆く顧客に手書きのメッセージを添えた供花を届けたり、客ひとりへの対応に6時間もかけたり、というサービスを各社員たちは積極的に行っており、会社もそれを奨励している。そんな丁寧な対応が客の心をしっかり掴み、購入者の75%が今やリピート客である。

 靴は何足注文しても配送料無料。戸外で使用しておらず、再販売可能な状態ならば365日以内の返品可。その返送料もザッポスの負担である。今では他社でも行っているサービスだが、これを最初に実行したのがザッポスだった。