『ハリー・ポッター』にも登場する“羊皮紙”、現実で作ると「めちゃ割高」だった!

完成まで、最低でも3週間かかる高級品
八木 健治 プロフィール

中世の書記は、そのようなジレンマをどう解消したのだろう。文字を細く、小さくしたのだ。中には米1粒ほどのスペースに5文字入るほど細かい写本もある。細かく書けば羊皮紙代が節約できる。

羊皮紙の写本に書かれた細かい字。左側が米粒(筆者提供)
 

さらに、頻出単語は短縮形にしてしまえ!「おはよう」は「OHY」、「I Love You」は「ILY」でいいじゃないか。わかる人だけわかればよい。羊皮紙はとっても貴重品。つまらない書物や用済みの公文書の表面を削って文字を消し、「リサイクル羊皮紙」として使い回すことも多かった。

羽ペンをインク壺に浸し、4単語ほど書くたびにまた浸し、その繰り返しで文章を綴る。書き間違えたらナイフで削る。削った後は羊皮紙が毛羽立ち、インクが滲んで書きにくい。かつて、書くことは気の遠くなるような重労働だった。オランダのライデン大学が所蔵する中世写本の終わりには、「やっと終わった酒をくれ」という後書きも見られる。

今やものを書く際に、紙の心配をすることはない。羽ペンを使うことはおろか、鉛筆を削ることさえなくなった。パソコンを起動して、キーボードを弾けば文字が出る。マウスを握って指を少し動かすだけで、瞬時に全文プリントされる。

中世の書記が見たらどうだろう。「現代こそが魔法の世界だ」と思うに違いない。1年かかっていた書き写し作業が、「全選択+コピペ」で1分とかからない。現代の私たちから見れば、羊皮紙や羽ペンはファンタジー。何でもできる魔法の世界。でも人間の長い歴史から見れば、ファンタジーに最も近いのは、今私たちが生きているこの時代ではないだろうか。

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