『ハリー・ポッター』にも登場する“羊皮紙”、現実で作ると「めちゃ割高」だった!

完成まで、最低でも3週間かかる高級品
八木 健治 プロフィール

毎日数回かき混ぜながら約1週間後、ようやく毛が抜けるようになる。「風呂場で脱毛」と言っても、カミソリでジョリジョリと剃るわけではない。剃っただけだと剃り残しの毛がペンに引っ掛かり書きにくくなるからだ。脱毛には、「剪刀」と呼ばれるナイフを使う。皮を太めの水道管に被せ、剪刀で毛を押し抜き、毛根から丸ごと抜き去ってしまう。

剪刀を使って原皮の毛を抜く筆者
 

羊皮紙作りは「スキンケア」である

脱毛した皮をさらに石灰水に5日ほど浸けて脂を抜き、続いて水に1日浸けてアルカリ性から中性に戻す。ここからが羊皮紙づくりの正念場だ。皮を木枠に張って伸ばし、削ってゆく。

厚さ1ミリ程度のゴムシートのようになった皮を、四角い木枠の端にヒモで結びつける。木枠の端にある取っ手を回すとヒモが巻き取られ、皮にテンションがかかる仕組みだ。80キログラムほどの張力で伸ばされることで、もともと立体的な動物の身体を覆っていた皮が平面のシート状となる。

極限まで伸ばした皮に、「ルネラム」と呼ばれる半円形のナイフの刃先を直角に押し当て、上下に往復させて削ってゆく。表面を均すとともに、線維間に溜まっている水分や脂肪分を絞り出す重要な工程だ。力を込めて全身を使い、上下運動をひたすら繰り返す重労働。石灰水と脂肪、剥がれた皮の屑が四方に飛び散る。

ルネラムで皮を削っている筆者

最後に、軽石で表面を研磨する。風呂場で行う足裏の角質落としと同じ処理だ。そう、羊皮紙づくりは文字通り「スキンケア」なのだ。羊の皮膚を滑らかに、白く輝く美しいシートにする作業。締めに炭酸カルシウムの粉を擦り込み、美白仕上げも欠かせない。ひたすら削りと研磨を繰り返す羊皮紙職人の全身は、舞い散る削り粉で覆われる。

風通しのよいところで約2日間乾燥させて、羊皮紙の完成だ。ファンタジーの要素など微塵もない地道な作業を経て、ようやく1頭分の羊皮紙ができる。石灰水に浸けておく期間を含め、最低でも3週間はかかるのだ。

完成した羊皮紙(筆者提供)

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