蘇民将来にまつわる「衝撃的な伝説」

「蘇民将来」は、疫病退散と大きく関わる人物だ。
「茅の輪を身に着け、『蘇民将来の子孫である』と名乗れば、疫病から救われる」という伝説が日本全国に残っている。古代、腰に巻いていたはずの茅の輪が、いつから神社境内の大きな茅の輪に変わったのかは定かでない。

京都には「蘇民将来」が祀られている神社がある。八坂神社の境内にある「疫神社」だ。祇園祭で知られる八坂神社のご祭神は、素戔嗚尊(すさのをのみこと)と妻と子どもたちである。その境内で、なぜ蘇民将来が祀られているのだろう。しかも、唯一疫病から守られた伝説の人物として。

八坂神社のお守りには「蘇民将来之子孫也」と書かれている。撮影/秋尾沙戸子

その伝説はこうだ。あるところに兄弟がいた。旅に出た素戔嗚尊(すさのをのみこと)は、裕福で立派な家に暮らす弟を訪ね、滞在を申し入れたが、ケチで意地悪な弟は、その申し出を断った。素戔嗚尊は次に、兄である蘇民将来の家を訪ねた。蘇民将来は、貧しいながらも狭くみすぼらしい家に泊めて、粗末な粟飯でもてなした。戔嗚尊は蘇民将来に言う。「後に疫病が流行るが、蘇民将来の子孫であると名乗り、腰に茅の輪を巻きなさい。そうすれば疫病から救われる」と。実際、このあと疫病が蔓延し、意地悪な弟はもちろん、全員病死。蘇民将来の一族だけが生き残り、後の世まで繁栄した。

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古から伝わるこの話は実はもっと複雑で、時代とともに詳細は紆余曲折変わっている。だが、裕福で利己的な人が命を落とし、貧しいながらも他人を助ける人こそが生き延びるーー。このシンプルな美談が現代まで残り、疫病退散を祈る祇園祭を支えてきたといっていい(祇園祭については、次回改めて)。