東京から京都に移り住んだジャーナリストの秋尾沙戸子さんと、秋尾さんを京都の師とあおぐ漫画家の東村アキコさんの連載「アキオとアキコの京都女磨き」、今回のテーマは「夏越の祓」

神社の境内などでたまに見かける、人がくぐれるほどの「大きな輪」。あれは一体何だろう? その背景には、唯一「疫病を免れた」男の一族と、その奇跡の物語が存在した! 自分の穢れを祓うこの季節ならではの神事や、6月末にぜひ食べたい、体の内側から祓ってくれる「お菓子」をご紹介します。

記事最後に掲載の漫画家・東村アキコさん本連載書き下ろしイラストも必見!

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先人が編み出した、
半年間の穢れを祓う「夏越の祓」とは?

なんか最近ついてない。なんか気持ちが後ろ向き。ここへきて鬱々としている人は多いかも。コロナ鬱なぞ無関係と思いこんでいたけれど、実は私も同じ。空を見上げても、どんよりと鼠色。本来、穢れを流してくれるはずの雨なのに、梅雨空が威圧的にしか見えず、うっとうしく感じてしまう。

でも大丈夫。この季節、憂鬱になるのは現代に始まったことではない。先人たちは、ちゃんとリセットの方法を編み出してくれた。水無月(みなづき、6月)下旬、神社境内で行われる「茅の輪くぐり」だ。茅の輪(ちのわ)とは、茅(かや)などイネ科の植物で作られた大きな輪で、茅には生命力があり、浄化作用と再生の力があると信じられてきたのだ。たとえば東京で設置されているのは、新橋の烏森神社、赤坂・日枝神社、湯島天神、神田大明神などなど。都心でも茅の輪を設ける神社があるので、出勤前とか昼休みとかに、参拝することをお勧めする。

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古代から続く、半期に一度のリセットが「大祓」だ。特に6月末は「夏越の祓(なごしのはらえ)」と呼んでいる。新年に初詣で頂いた神気は半年の間に濁ってくる。その穢れを、茅の輪をくぐることで祓おうというのは先人の知恵。穢れの大掃除を経て暑い夏を乗り越え、後半戦を健やかエネルギッシュに過ごそうというのである。

「夏越の祓」は6月末日に神社で斎行される神事だが、茅の輪そのものは、中旬頃から境内に設置され、朝から閉門まで、自分のペースでくぐることができる。左、右、左と3回、8の字に潜るのが作法とされる。どうやら浄化と再生に関係するらしい。そして、その際に唱える歌がある。

水無月(みなづき)の 夏越の祓する人は 千歳(ちとせ)の命 延ぶというなり

上賀茂神社では朝と夜、神職が茅の輪をくぐった後、祓の儀式を行い、夏越神事が斎行される。撮影/秋尾沙戸子

6月末に夏越の祓をしておけば、大病にかからず千年生き延びるという。詠み人知らずのこの歌は、多くの神社で、茅の輪の横にたてられた看板に書かれ、唱えることが推奨されている。しかしながら、たとえば京都の上御霊(かみごりょう)神社では、さらに次の2首が加わり、神職たちに続いて参列者が茅の輪をくぐるのである。

さばへなす 荒ぶる神もおしなべて 今日は夏越の祓なりけり
蘇民将来 蘇民将来 祓へ給ひ 清め給へ 守り給ひ 幸きはへ給へ

この「蘇民将来(そみんしょうらい)」とは何者か。茅の輪の起原と関係あるのだろうか。