映画やドラマを観て「わかんなかった」という感想が増えた理由

観客が“幼稚”になったのか?
稲田 豊史 プロフィール

「おもしろい」と言うのは勇気がいる

ただ、SNSで発信される作品の感想は、ネガティブなものばかりではないはずだ。「おもしろい」が「わかんなかった」を相殺するほど多ければ、製作委員会は“幼稚な観客”に忖度する必要もないだろう。

しかし、佐藤氏は言う。

ネットで“おもしろい”って声をあげるのは、勇気がいるんです。絶対に否定されないような、あらゆる人が傑作と認めている“勝ち馬”にしか、“おもしろい”って言えない空気がある。誰も評価しない“負け馬”に乗っていることに謎のプライドを持つ昔のオタクとは、真逆なんですよね」(佐藤氏)

 

たしかに、そうだ。ネットで声高に賛成意思を表明するのは、リスクが高い。最近では、大阪・西成区の新今宮で女性ライターが「ホームレスとデート」した美談記事が、公開直後に多くのネット著名人によって絶賛されたが、炎上するやいなや、絶賛した彼らは一斉に沈黙。そして、「あの記事を絶賛した奴は誰だ」という狩りが始まった。著名人が大昔に「いいね!」を押したツイートがヘイト発言だったことで、のちに謝罪する羽目になったケースもある。

作品に賛同するよりも、クレームを言うほうがマウントを取れます。“こんなわかりにくい作品をつくりやがって”と憤ることで、被害者になれる。しかも被害報告はネット上で賛同を得やすい」(佐藤氏)

SNSの誕生によって、どんな民度の人間も、事実上ノーコストで、ごく気軽に「被害報告」を発信できるようになった。それが、多くの人に「わかんなかった(だから、つまらない)」と言われない、説明セリフの多い作品を生んだのではないだろうか。

※後編「『逃げ恥』『シン・エヴァ』…『リテラシーが低い人を差別しない』作品が時代を制する」に続く

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