映画やドラマを観て「わかんなかった」という感想が増えた理由

観客が“幼稚”になったのか?
稲田 豊史 プロフィール

近い話は、筆者も聞いたことがある。とある作品のワンシーンで、男女が無言で見つめあっているが、互いに相手から視線を外さない。明らかに、好意を抱きあっている描写だ。しかしある視聴者は、それが相思相愛の意味だとわからず、誰かから教えられると、こう反論した。

「でも、どっちも『好き』って言ってなかったから、違うんじゃない? 好きだったら、そう言うはずだし」

悪い冗談としか思えない。

つまりそういった視聴者にしてみれば、物語の登場人物というのは、いま思っていることをすべて正直に、セリフもしくはモノローグで表明する義務を負っている、ということになる。

 

製作委員会が「わかりやすくしろ」と言う

アニメーション映画『この世界の片隅に』(16)などのプロデュース会社・ジェンコの真木太郎社長によれば、説明セリフの多い作品が増えた理由のひとつは、製作委員会(製作費を出資する企業群)で脚本が回し読みされる際、「わかりにくい」という意見が出るからだ。

なぜ製作委員会は、そこまで「わかりやすさ」を求めるのか。

観客がわかってくれないんじゃないかって、不安なんだろうね。本来、セリフで説明しすぎると白けちゃうから、多少わからなくても映画に集中させるほうがいいし、僕個人としては、わかりやすくすることだけが作品を良くする解決策だとは、まったく思わない。ただ、『わかりにくいから直してほしい』と言ってくる委員会メンバーが多いのは事実」(真木氏)

真木氏は、押井守監督の『機動警察パトレイバー the Movie』(89)や今敏監督の『千年女優』(02)をはじめ、30年以上にわたる商業作品のプロデュース経験がある。それだけに、「テレビドラマはもちろん、映画に関しても、説明セリフの多い作品が20年前、30年前と比べて圧倒的に増えた」との言葉には、重みがある。

編集部からのお知らせ!

関連記事

ABJ mark

ABJマークは、この電子書店・電子書籍配信サービスが、著作権者からコンテンツ使用許諾を得た正規版配信サービスであることを示す登録商標 (登録番号 第6091713号) です。 ABJマークについて、詳しくはこちらを御覧ください。https://aebs.or.jp/