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日本が大歓迎する「イギリスの中国牽制」その落とし穴

政策の実態は「張りぼて」かもしれない

イギリスがインド太平洋地域へ空母「クィーン・エリザベス」を派遣することが台頭する中国への牽制として、日本では歓迎されている。しかし、その報道は安全保障に焦点を当てた「敵か味方か」的なものが多く、したたかなイギリス外交に鑑みるとナィーブすぎるように思える。

イギリスが空母を遠路はるばる極東まで派遣するのは、言うまでもなく、自らの国益追求のためである。そして、イギリスは決して対中政策で旗幟を鮮明にした訳ではなく、経済と安全保障で二兎を追おうとしているのが現状である。

本稿では、欧州連合(EU)を離脱したイギリスが高々と掲げる「グローバル・ブリテン」(大英帝国の夢をもう一度!)推進の外交的ツールとして空母を活用するという実情とともに、欧米列強が19世紀にアジアで展開した砲艦外交を彷彿とさせる政策の実態は「張りぼて」ではないのかという点を指摘したい。

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装備も人員も不足している

英海軍史上最強の空母「クィーン・エリザベス」(満水排水量67000トン、全長284メートル)は5月22日、英南部ポーツマス港から28週間におよぶ大航海に出発した。駆逐艦や原子力潜水艦などを従える空母打撃群(計9隻、呼称・CSG21)として、地中海からスエズ運河を抜け、インド洋、南シナ海、西太平洋を目指す。

2017年に就役した同空母にとって初の本格的な航海であり、シンガポールや韓国、日本などに寄港し、40カ国以上と交流・共同演習を行う予定だ。また、地中海では、搭載機F35Bによるイラク国内の過激組織「イスラム国(IS)」拠点への初の実戦攻撃も行う計画だとされている。

とは言っても、空母打撃群は全てが自前ではなく、多国籍の混成部隊である。空母の乗組員約1700人には米海兵隊250人が含まれ、搭載機F35Bの内訳は英空軍の8機に対し、米海兵隊はそれを上回る10機を占める。部隊編成を見ても、米海軍の駆逐艦とオランダのフリゲート艦各1隻が含まれるという具合だ。

この編成を前向きに解釈すれば、北大西洋条約機構(NATO)加盟国の対中結束を示すものとアピールできるかもしれないが、実態は、イギリスだけでは空母打撃群を編成する装備も人員も不足しているということである。

中堅国家であるイギリスにとって、相当に背伸びしたオペレーションと言えるだろう。

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