自衛隊接種予約システム大混乱?国に個人情報管理させないからでしょ

接種効果も削ぐ何たる情報アナキズム
山本 一郎 プロフィール

「国民の情報を国が管理するのはけしからん」

他方、日本の事情についてはより深刻で、日本ではそもそも政府(国)が国民の情報をほとんどもっていません。

昨年の国民一律10万円の給付金がなかなか支払われない、自治体ごとにスピードに差があると問題になったのは記憶に新しいところですが、政府は(国税庁や金融庁以外は行政情報として)国民や法人の銀行口座番号を保持していません。誰がどのような経済状態で、一定の経済的苦しさ以下の人たちに手厚く現金給付を政府が行うことは、仕組み上、不可能なのです。

それらの情報は、原則としておのおのバラバラの個人情報保護条例を持つ、日本の各自治体に委ねられています。政府が、「信長の野望」で「民忠」を上げるように「よし、お金をばら撒こう」と思っても、誰がどこの金融機関に口座を持っているのかすら分からないので、いちいち封書を送り、本人確認書類を作り、送り返してもらってから自治体の窓口から振り込む、という段取りを取らなければならないのです。

同じことが、今回の自衛隊の接種予約システムでも発生しました。自衛隊は、各自治体が住民の皆さんに振り出した接種券に記載された接種番号はおろか、いま目の前にいる国民が誰なのかすら良く分からんのです。

ましてや、1日何万人、十何万人とアクセスするであろう自衛隊のワクチン予約システムで、誰をどう認証するのかというのは、良くも悪くも「国民を信じれば、きっと国民もそれに応えて悪いことはしないだろう」という謎の性善説で運営せざるを得なくなった、というのが実情です。

複数の防衛省幹部も「そうするしかなかった」と取材に応えているように、いわば一連の自衛隊大規模接種会場での予約システム自体は「そのような仕様であった」としか言いようがありません。

「そんなことになるならば、最初から住民台帳とリンクさせればよかったじゃないか」とか「もっと国民にスムーズな接種ができる仕組みを準備してないから日本はデジタル政府で敗戦状態なのだ」などという批判はたくさん出ます。私も、概ねにおいてその批判はもっともであろうと思います。

 

しかしながら、日本でここまで個人情報がバラバラに、「2000個問題」などと称して、多くの自治体が行う住民管理の枠内でしか政府が国民の情報を持ててこなかったのは、日本政府や政治の怠慢というよりは、国民が国民の情報を国が管理するのはけしからんという長年の態度の結果だったことは明白です。

編集部からのお知らせ!

関連記事

ABJ mark

ABJマークは、この電子書店・電子書籍配信サービスが、著作権者からコンテンツ使用許諾を得た正規版配信サービスであることを示す登録商標 (登録番号 第6091713号) です。 ABJマークについて、詳しくはこちらを御覧ください。https://aebs.or.jp/