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サンデル先生の新刊に「心中穏やかでないエリート」が続出している理由

お勉強がもたらす「分断」の深淵

『実力も運のうち』の波紋

マイケル・サンデル氏の新著『実力も運のうち 能力主義は正義か?』が日本でも大ヒットし、瞬く間に数万部を超えるベストセラーとなった。「公平」を建前とする能力主義の欺瞞的な本性を白日のもとに晒す同著の内容と、そのセンセーショナルなタイトルに対する反応を観測するかぎり、心中穏やかではない人も少なくないようである。

日本を含む先進社会の根底には「能力主義」があり、その指標は学歴(主として卒業した大学の偏差値)である。日本においても、高い学歴をもつエリートの多くは、この「能力主義」=「学歴主義」のイデオロギーを何の違和感もなく受け入れている。

だが、サンデル氏は新著で、この社会構造を根本から批判した。「学力試験による序列化構造は、人びとの努力を正しく反映する、この社会でもっとも公平で公正な競争である」という前提を否定し、この前提によって肯定もしくは正当化されている格差や不平等を明るみに出したのだ。

 

座学の勉強が得意で、優秀な成績をおさめ、東大を筆頭とする難関大学に合格した人には、往々にして「『お勉強による序列化構造』は、各人の努力が反映される公平で公正な競争の結果である」という信念を抱くようになる。

たとえば、その地域でトップクラスの学力を誇る有名私立校に通っている人ですら「自分はなんの《ゲタ》も履いておらず、コツコツと努力して現在の結果を得た。学力で劣っている人びとや、志望する学校に合格できない人びとは、努力を怠っているに違いない」と考える程度には、この「学歴による序列化はフェアである」という信念は根強い。

この「学力・学歴による序列化構造で劣位におかれた人は、公平で公正な競争の機会を与えられていながら、上位になれるような努力を怠った人びとである」という信念から「だから、彼らが自分の現状に対して不満を言ったりするのは不当である」という結論まではわずかな距離しかない。

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