愛猫の闘病、看取りに集まった声

こうして本の原稿をすべて書き上げた後に、じつは猫沢さんの人生はさらに新たな局面を迎えることになった。

ともに暮らし、本にも登場してくる3匹の猫のうち、メスのイオちゃんがやっかいな病に犯されていることがわかったのだ。猫沢さんは診断を受けた日から、イオちゃんの闘病の様子や介護する自分の思いを毎日、克明にインスタグラムに投稿し続けた。

「この本を脱稿して1週間後くらいにイオの病気が発覚しました。SNSには投稿したものの、直後から後悔が始まっていました。イオの病気は扁平上皮がんという難しいがんで、かなり過酷なものだったし、その実情を知るほどに、辛い現実に向き合いながら書いている自分も嫌でたまらなくなって……。ところが、数日経った頃から、フォロワーさんから次々とメッセージが届くようになったんです。私の犬も同じ病気でした、とか、犬や猫だけでなく、母が末期のがんだった、とか……」

多くの方が、私を自分の代弁者のように思ってくださっている……、そんな思いで猫沢さんは投稿を続けることができたという。過酷な状況に直面していると、それを表現するエネルギーまでとても絞り出せないことが多いものだが、猫沢さんは逆に、同時進行で書いていくことで、辛い現実と対峙するバランスをとっていたのかもしれない、と振り返る。

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イオちゃんの闘病日記を通して初めて猫沢さんの存在を知り、コンタクトしてくる人は、さらに増え続けた。

「犬猫関係なく、人間でも、介護や闘病の最中や、大切な存在を送ったことについて、もっとこうしてあげたらよかったと後悔したり、誰にもいえない苦しみを抱えている人が本当にたくさんいて、私の文章を読んで涙したり、共感してくれるということに、正直、とても驚きました。

この本の最終校了の翌々日にイオは亡くなりました。扉を開くとすぐにイオの写真が出てくるのですが、このデザインも意図したものではなく偶然。もしかしたら、イオが最後までこの本が出来上がることを見届けてくれていたのかも、と感じています」

人にも動物にも、食にも日々の生活の些細なことにも愛に溢れる猫沢さんには共感の声が多い。写真/鈴木陽介『ねこしき』