チェックイン後、再びアブーが目の前に

翌朝このことを宿主に話すと、やはりこの宿に泊まるのは売春を商売としている中国人女性と、女性を買うために来るオマーン人男性客が殆どだという。もちろん表向きにはちゃんとした宿として営業している。ただ、この国では安宿といったらこういった売春宿が多く、観光客はちょっと高めのホテルに泊まるのが一般的だそう。

お客さんは君を中国人の売春婦と勘違いしたんだね。昨日パスポートを見てびっくりしたのは、日本人女性が一人でこんな安宿に泊まりにくるなんて滅多にないことだからだよ」

チェックアウトを済ませて宿の外へ出ると、アブーが待ち構えていた。友人らしき小柄な男性と駆け寄ってきて「昨日は本当にすまなかった。お詫びに友人と2人で今日1日観光を手伝ってあげるよ」と言う。

昨日あんなことがあったけど、忌まわしい宿での出来事が頭に焼きつき、誰かと話して気持ちを落ちつけたかった。私は再び彼の車に乗り、観光案内をしてもらうことにした。とことん大馬鹿者だとも思ったが、昨日の一件で彼は純粋な好青年だという確信があったからだ。

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ドライブをしながら昨夜売春婦に間違えられた出来事を話すと「昨日自分があんなことをした後にそんな目に遭ったなんて、とてもかわいそう」と、また涙目になっている。そして、「気分を変えて、オマーンで良い想い出を作ってほしい」と、断崖絶壁の大自然が堪能できるワディ・シャーブや美しい古都ニズワなど、色々な観光地に連れて行ってくれた。

古都ニズワは壺が名産で、どこを歩いても壺・壺。驚くほどに壺だらけ状態だ。写真提供/歩りえこ

その勢いのまま、隣国であるアラブ首長国連邦を目指すことにし、アブーたちはドバイまでのバスチケットを取って、乗り場まで送ってくれた。アブーは「本当にすまなかった。どうか良い旅を」と、またしても眼に涙をいっぱい溜めながら手を振って見送ってくれている。やはり本当に純粋な青年だ。

二ズワの観光案内してくれたアブーとその友人。とても親切にしてくれて感謝だ。写真提供/歩りえこ

彼がアラーの神に懺悔するような出来事が起きなくて本当に良かった。見つからなければ何をしても良いだろうというのは大きな間違いだから。

人が見ていないところで何をしたか? どう生きたか? 生涯を終える瞬間に後悔ないよう生きるには、他人や自分に対して「誠実な人間になる」ことが大切なのだと感じる旅になった。

断崖絶壁の大自然が堪能できる「ワディ・シャーブ」はドバイからも1時間ほどで行けるオマーンの代表的な観光地だ。写真提供/歩りえこ

ブラを捨て旅に出よう 貧乏乙女の“世界一周”旅行記

費用はたったの150万円という、想像を絶する貧乏旅をしながら、2年間をかけてほぼ世界一周、5大陸90カ国を巡った著者。そのなかから特に思い出深い21カ国を振り返り、襲われたり、盗まれたり、ストーカーをされたり……危険だらけの旅のなかで出会った人情と笑いとロマンスのエピソードを収録。(講談社文庫)

Huluオリジナルドラマ『ブラを捨て旅に出よう〜水原希子の世界一周ひとり旅〜』

©︎Hulu Japan

人生に迷いを感じた水原希子が、突如、世界一周旅行を宣言。原案の実話エピソードをベースとしたストーリー展開を予定しているものの、現地へ赴けばハプニングだらけの珍道中(!?)という半分ドキュメンタリーのオリジナルドラマ。[全6話]