約2年をかけてほぼ世界一周した様子を綴ったエッセイ『ブラを捨て旅に出よう』の著者で旅作家の歩りえこさんに、現地で会った人々や印象的だった出来事などを綴っていただいているFRaU web連載「世界94カ国で出会った男たち」(毎月2回更新)。

今回は、アラビア半島に位置する「オマーン国」を訪れたときのエピソードを披露。そこで出会った軍人の青年に観光案内してもらっていたら、突然押し倒されてしまったそうで……彼はなぜそんなことをしたのか? そして、そのピンチをどう乗り越えたのか? 詳しく綴っていただきました。

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宿ですれ違う人がみんなジロジロ見てくる

オマーンはアラブ首長国連邦の隣にあるカラフルなモスクや乳香で有名な国だ。しかし、まだまだ観光客が少ないためか、安宿といっても一泊2千円ぐらいする。インドやネパールなどは一泊2百円程度だったので節約バックパッカーにとってかなりお高い部類に入る。

オマーンのマスカット国際空港。写真提供/歩りえこ

節約のため空港ベンチで夜明けを待ち、朝になってからガイドブックに載っている一番安い宿にチェックインした。宿主がパスポートを見るなり「本当に日本人? 中国人じゃないの?」と聞いてきた。日本人だと答えると、頭のてっぺんからつま先までなめまわすように見てきた

なんだか気持ち悪いのでそそくさとキーを貰って部屋に向かったが、なぜかすれ違う客もジロジロ眺めてくる。その後、中国人らしき女性とも何人かすれ違ったが、同じく凝視した後、驚くことに睨み付けてきた

ハズレ宿かな? もう宿代は払ってしまったし、他の宿を探すのは面倒だと気を取り直して、街に出ようとしたら……部屋のドアをノックする人がいる。ドア穴から覗くと、白髪頭の老人がバナナとミルクを持って突っ立っているではないか……。

優しそうではあったし、年老いていて危険はなさそうなのでドアを開けることにした。老人は食べ物を差し出すと「ナイト?」と、よくわからない言葉を口にしている。ジェスチャーでわからないと説明すると“食べなさい”というジェスチャーで返された。

ただの親切なおじいちゃんみたいだ。バナナとミルクを受け取り、アラビア語で「シュクラン(ありがとう)」と、礼を言うと部屋のドアを閉めた。ちょうどお腹も空いていたし、紙パックミルクや房のついたバナナなら毒を盛られる可能性もないと思ったので食べることにした。オマーン人って親切だなと思いながら、外出した。

首都マスカットには仕事を引退したご老人がただただ座っている光景を目にすることが多かった。毎日快晴でほぼ雨は降らず、夏は連日40度越えが当たり前。写真提供/歩りえこ