ゲイカップルが子育てで直面する苦労

ミケルさんによると、LGBTカップルの存在は国内で受け入れられつつあるものの、代理出産を通じて子どもを持ったゲイカップルの育児の過程では、一般的な子育ての悩みとは異なる苦労に直面するという。

「ひとつは法的権利の問題で、養子縁組を終えるまでは片方の親が親権を持たないため、子どもを医者に連れて行ったりできません。本来は幼稚園の送り迎えも親権を持つ親のみとされていますが、多くの幼稚園ではゲイカップルの事情を汲んで了承しているようです」

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見ず知らずの人たちとのコミュニケーションにも苦労が伺える。例えば、子どもと一緒に買い物に行った際、店員がゲイカップルを兄弟だと思い込み、「お父さんはどっち?」と尋ねられた事例もあるそうだ。

「彼らはなんと言っていいかわからず困惑したものの、片方の男性を父親だと言って、その場を離れたと言っていました。子どもを持つゲイカップルは国内では相当めずらしいので、こういった場面は少なくないでしょう」

子どもが生まれた背景を子ども自身に伝えることも重要だ。同性カップルが子どもを持つことに対して寛容なデンマークでは、「幼い子どもにも出生の背景をオープンに伝える風潮がある」とミケルさん。

「代理出産によって生まれた子どもの多くは、代理母の存在、代理母が自分を産んだこと、身体的な母親が別にいることを知っています。私がインタビューしたある子どもは、代理母を『ヒーロー』と呼んでいました。ゲイカップルたちは子ども向けの絵本などのツールを使いながら、子どもがどうやって生まれたか、なぜお父さんが2人いるのかを丁寧に伝えています」

性教育が盛んなデンマークでは、幼い子ども向けに「子どもが生まれる方法」や「多様な家族のあり方」が描かれた絵本がいくつも存在する Photo by iStock

外に出れば子どもが傷ついてしまうような出来事もあるが、その多くは差別や嫌がらせではなく、多様な家族のあり方を知らないために起きるものだとミケルさんは言う。彼らの存在が世間に認知されてくれば、周囲の反応が前向きに変わることは大いに期待できる。

とはいえ、デンマークの代理出産の法律が変わらない限り、子どもを持ちたいと願うゲイカップルの苦悩は続くだろう。彼らの不平等を解消する取り組みも求められるが、代理出産にまつわる倫理的、法律的、社会的、医学的な課題は複雑に絡み合い、結論が簡単にくつがえることはなさそうだ。

これらの課題は決して軽視できないが、法を犯してでも子どもを持ちたい当事者の気持ちを思うと胸が締めつけられる。世間の納得を得て、彼らが幸せになれる方法はあるだろうか。

編集/大森奈奈

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