2021.05.29
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藤井聡太の脳はいかにしてできたか…数字と鉄道にのめり込んだ少年時代

藤井聡太論 将棋の未来(9)
変動と混沌のさなかにある将棋界に彗星のごとく現れた、藤井聡太という天才棋士。自身も史上最年少で名人位を獲得した、谷川浩司棋士が、藤井聡太という巨大な才能の謎に迫ることを通して、トップ棋士の持つ能力を明らかにするとともに、新たな時代を迎えつつある将棋の現在と未来を展望した。その強さの本質はどこにあるのか。メンタルはどれほど強靱か…『藤井聡太論 将棋の未来』から抜粋して掲載!

将棋は学業にも役に立つ

将棋は大学受験にも役立つと思う。私自身に体験はないものの、実際に奨励会員や棋士の多くが難関とされる大学に入学、卒業している。学業に要するさまざまな力を将棋から得ることができる、とも言える。

思考力や記憶力、集中力、持続力は直接勉強に役立つだろう。なかでも若い世代は長時間、集中することが難しいようだが、将棋のアマチュア有段者になると、一局に一時間をかけて指す。その間、集中力を維持することが求められる。

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意外と大事なのは、タイムマネージメントの能力である。対局には持ち時間があり、一局の中でどのように時間を使うかを考えなければならない。例えば棋士は体感だけでほとんど誤差なく1分間を測ることができるはずだ。

一定の時間内で試験の各設問にどれだけの時間を割くか、あるいは学業と将棋の両立のために限られた時間をどう配分するか。時間管理の力が鍛えられる。

また、目標へのプロセスを構想できるようになる。例えば高校2年生で志望大学を決めた時、受験時期の高校3年の1月から逆算してそれまでにどういうことをすれば合格する確率が高くなるかを考えることができる。

 

対局で勝つためには自分の長所と短所を把握して、短所を克服し、長所を伸ばすためにどうすればいいかを分析する必要がある。それは一定の課題をクリアする受験にも生かされるはずだ。

それからモチベーションである。棋士や、棋士を目指す奨励会員にとって、大学は行かなくてもいい場所だろう。それでも行く場合は「周りが行くから自分も行く」といった動機ではなく、明確な目的意識をもって自分の意志で決めることになる。自分で決めた限りは、合格のためにどうすればいいかを精一杯、自分で考えるはずだ。

将棋は頭脳スポーツであると同時にメンタルなゲームでもある。焦りや緊張、動揺が負けにつながることが少なくない。常に平常心を保つことが求められる。それを養うことは大学受験に限らず、あらゆる試験や面接、スポーツ、発表会などで必ず役に立つ。

奨励会に入ることができても、そのうち棋士になれるのはわずか2割ほどだ。残念ながら棋士になれなかった人にも幸せになってほしい。だから棋士にはなれなかったけれども、将棋や奨励会での経験が大学受験やその後の社会人経験に役立ったという話を聞くと、心からうれしくなる。

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