自分だけが“尋常ならざる”努力をしているつもりもなかったが、鈴木さんにはそこに葛藤はなかったのかと何度も聞かれた。「この方法でしかない」と思い込んでいた私は、「葛藤はなかった」と答えたが、最後までその「葛藤がない」という部分のニュアンスがうまく伝わったとは思えなかった。

決して仕事と子育てを両立しました、なんて恥ずかしくて言えないことは自覚していたし、このやり方をオススメもしてこなかったつもりだった。だが、鈴木さんの指摘によって、先輩世代のこうした働き方自体が相当なプレッシャーになっていたのだと改めて知った。このスタイルがデフォルトになったら困るんだと訴えられたからだ。確かに私がこの方法を選択したことが影響してか、同じAERA編集部にいた3つ下の後輩も、北海道から両親を呼び寄せて同じマンションに住んでもらい、子育てを全面的に手伝ってもらっていた。

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「働き続ける」にはそれしかなかった時代

『働く女子のキャリア格差』の著書もある静岡県立大学経営情報学部准教授の国保祥子さんは以前、私の取材に対して、「働く意欲の違いは10年おきのグラデーション、世代間ギャップがある」と話してくれた。私より10ほど下の国保さんは均等法世代に対して「働く意思を固めた人たち」という印象を持ち、自分より10ほど下の30代前半の人に対しては、「働き続ける」というより「辞めない」選択をした人たちであると感じていたそうだ。

育児休業法が改正され、企業の制度も整備され、時短制度やシッター補助など両立支援制度が整ってくると「辞めなくても済む」ようにはなってきた。何も制度がなかった頃の均等法世代は「働き続ける」ためには子どもとの時間が犠牲になっても、お金が多少かかっても、「働き続ける」ことを何より優先するしかなかった。この時代背景の違いがどうしても「働く」ことに対する意識ギャップに繋がることは致し方ないだろう。均等法世代に比べ働き続ける女性自体の母数が増えているのだから、同じ世代の中にもグラデーションの幅が大きくなっていることも理解しておかなければならない。

「働き続ける」なら子どもがいないようにしなければ一線で働けない世代と、「働き続けること」が法整備としてだいぶできるようになってきており、「働き方」を考えていく世代。たしかに前者があって今がある。ただしだからといって同じような働き方が良いわけではない Photo by iStock