日本のジェンダーギャップ指数が120位。医療や教育のジャンルではそれぞれ40位と91位という水準ながら、政治参加の分野は147位、経済分野が117位と低いことがその背景にある。出産などライフイベントとキャリアとの両立が難しかったり、そもそもキャリアにつながる機会すら与えられていなかったりする現状があるのだ。

ただ、その現状を変えようという問題提起のときに必ず出てくるのが、「管理職になりたいという女性ばかりではない」「やりたい人、能力がある人がやればいい」という意見だ。それはその通りなのだが、本来その考えは性別に限ったことではないだろう。ジェンダーギャップ指数で見えてくる問題は、女性でもなりたい人が選べる環境になかったり、女性というだけで入り口に立つことすら難しいという現実なのだ。

それなのになぜ問題点から少しずれた議論になりうるのだろうか。もしかするとそこには、男女雇用均等法が施行されたばかりの世代の「キャリアを積む」ための行動の「伝え方」にも要因があるのかもしれない。元AERA編集長で、Business Insider Japan編集統括をつとめていたジャーナリストの浜田敬子さんが、自身の行動も振り返り、その「温度差の理由」を分析する。

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女性のキャリアウェビナーで見えた「温度差」

森発言やジェンダーギャップ120位など、日本のジェンダー後進国ぶりが露わになったニュースが相次いだことから、この春はさまざまなジェンダーに関連する緊急のオンラインイベントが開かれていた。女性だけでなく男性も含めて幅広い世代が、なぜ日本でジェンダーギャップが解消されないのかを一緒に考え、議論する機会は貴重だが、そうしたトークイベントの中には終わった後にプチ炎上しているものがいくつかあった。

いくつかの炎上のうち、私自身印象的だったのが、ロールモデルと言われる男女雇用機会均等法世代(もしくはそれより少し上)が自分たちの体験を話して、後輩世代にアドバイスを与えるという形のもの。良かれと思ってしたアドバイスが反感を呼んでしまったり、「私には無理」とやる気を削いでしまったりという残念な形に終わっていた。

例えば先輩世代からは、与えられた仕事は絶対に断らない、チャンスは自分から取りに行くこと、大学院に行ってMBAを取る、家事や育児はベビーシッターなど外注すればいい。つまりいかに仕事やキャリアに集中して努力して、自分たちはサバイブしてきたのかを伝え、だからあなたたちも頑張って、と叱咤激励するパターン……。確かに私も親に育児を丸投げした世代だが、それでも聞いていて途中からいたたまれずイベントから離脱してしまった時もあった。

とても頑張った経験を話しているのはわかるけど、ついていけなくて落ち込んでしまう…そんなこともある(写真の人物は本文と関係ありません)Photo by iStock

アドバイスする側は純粋に自分の経験を伝えて後輩たちを励ますつもりだったと思う。だが反応を見ていると、「シッター代をそこまで使って仕事をしたくない」「そもそもシッター代すら払えない人もいる」「キャリアこそすべてという考え方には共感できない」「それこそ仕事第1の考え方が男性化している」と手厳しいものが多かった。

ジェンダーの問題を論じる難しさは、どうしても自身の経験を基準にしてしまうことだ。だが私自身の経験として、世代や立場の違いからくるギャップはどうしても埋めがたい。自分の経験を語る時、アドバイスをする時、そのことを自覚しているかどうかで、メッセージの届き方は随分と変わってくると思っている。