閲兵するヒトラー(photo by gettyimages)

なぜヒトラーは現代に蘇ったプラトンと主張されたのか?

ハイデガーは『国家』を思い切って意訳
プラトンの哲学は、歴史に大きな影響を与えてきた。注目されるのは、ナチスによるプラトンの受容である。ナチスが、プラトンの思想に「理想の国家」を見出した背景とは? 京都大学教授の中畑正志氏による最新刊『はじめてのプラトン 批判と変革の哲学』から、その一部を特別公開します。

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ナチスに受容されたプラトン

19世紀から20世紀は、新プラトン主義経由の読み方とは大きく異なるプラトンが読みとられるようになる。

一方では、文献学の発達や哲学史研究の進展によって、よりテキストに即した学術的解釈が試みられ、またカントに先立つ、体系的な哲学理論の提唱者というプラトン像も提示される。

しかし他方で、それらとは大きく異なる解釈も勃興する。その顕著な例は、ドイツの詩人シュテファン・ゲオルゲとその周囲の人びと(ゲオルゲ・クライス)によるプラトンの受容である。

彼らは、新プラトン主義的な解釈だけでなく当時のアカデミックなプラトン研究に対抗し、プラトン哲学における、エロース、身体性、政治的関与などの要素を強調する。

シュテファン・ゲオルゲ(photo by Wikimedia Commons)

彼らにとって、プラトンは哲学者であると同時に詩人であり、教育者であり、政治家であり、同性愛者である点で特別な存在なのだ。

ゲオルゲ派の人びとは、近代において分裂した知的思考と詩的神話的想像力、そして行動との一体性をプラトンの内に見出す。彼らはプラトンを再活性化することによって、プラトンの理解においても、そして現実的にもその分裂から統合することを試みた。

こうした点にかぎれば、それ以前の解釈が蔑ろにしがちだった、プラトンの哲学と現実の生とのかかわりを、そしてそのプラトンの著作の力を、より全体的に引き受けていたと言ってもよい。

そしてこの方向で読みとられたプラトン像は、じっさいに人びとを動かし、具体的な力(影響力と権力)を伴うに至った。こうした「実践的な」プラトンの読み方を取りあげたい。

『はじめてのプラトン』の「はじめに」で軽く触れた、ナチスに受容されたプラトンと、ネオコン(ネオ・コンサーバティブ、新保守主義者)と関係があるかもしれないプラトンである。

どちらも、本来なら一冊の書を費やして語るべき話題である(私にも論じたいことは多い)。『はじめてのプラトン』はプラトンの入門書であるにもかかわらず、あえてこんな話題に触れるのは、こうした読解も、プラトンを読むうえで考えるべき課題を示唆しているからである。

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