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ドイツ各地で加熱する「ユダヤ排斥デモ」その原因を作ったのは誰か

メルケル首相は無難なコメント一言のみ

ドイツに漂う不穏な空気

イスラエルと、パレスチナガザ地区のハマスとのミサイル合戦が続いており、その激しさにドイツ人は驚愕している。

ニュースの映像を見る限り、これはほぼ戦争だ。ガザ地区ではすでに200人が犠牲になったと言われる。そして、ドイツでこれを見たアラブ系のたちが激昂し、各地で大々的な反イスラエルデモを繰り広げている。

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5月15日の土曜日、ベルリンでは、デモ隊(警察発表では3500人が参加)が暴徒と化して警察と衝突した結果、93人の警官が負傷、60人が逮捕された。多数のパレスチナの旗が翻る中、熱狂的に何かを叫んでいるアラブ系の人々の姿を見ていると、これがドイツの首都の光景とは、一瞬、信じられなくなる。翌16日には、約1000人が400台の車に分乗し、ベルリン市内を隊列を組んでクラクションを鳴らしながら走った。

他の都市では暴動化はしなかったものの、不穏な空気は漂っている。イスラエルの国旗が焼かれたり、シナゴーグ(ユダヤ教会)やユダヤ関連の記念碑が毀損されたりと、ユダヤ攻撃が相次ぐ。当たり前のことだが、彼らの糾弾の対象はイスラエルであり、そこで叫ばれているスローガンは、「パレスチナに自由を」などという穏和なものだけではなく、過激なユダヤ冒涜も含まれている。

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言うまでもないが、ドイツでは反イスラエル、反ユダヤはタブー中のタブー。戦後のドイツ人は、学校で徹底的にホロコーストに対する贖罪意識をたたき込まれており、ユダヤ人に対してはいかなる非難めいたことも言ってはならないという暗黙の約束が国中を支配している。現在、70歳以下の人たちは、全員、このポリコレの空気の下で育ったと言っても過言ではない。

しかし、実際に今日、皆が罪の意識を持っているかというと、それは別で、特に若い人たちは、ホロコーストは絶対悪ではあるものの、自分たちとはそれほど関係がないと思っている。そもそも彼らは別段、ユダヤ人に対する偏見も持たない。

私は、戦後76年も過ぎたのだから、ホロコーストはこのような感情を入り込ませず、そろそろ冷静に、歴史上の出来事として扱っていくのが良いのではないかと思っているが、ドイツではそれは許されない。ホロコーストは決して風化させてはならず、常にドイツ人の感情を揺さぶるべきだと言う考え方のようだ。

 

だから、最近、政治家はことあるごとに、「忘れてはいけない」と国民を鼓舞し、「記憶の文化」などという新造語も作られた。政治家の言動に、少しでも反ユダヤ主義が見えたなら、一瞬で政治生命を失うほど、その掟は厳しい(今週月曜にも、ドイツサッカー協会の会長が、副会長をナチに喩えたことが理由で辞任したばかり)。

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