ファンの「お気持ち」への配慮が凄まじい、現代アイドルのハードすぎる仕事

アイドルを「感情労働」から読み解く

「感情労働」という概念がある。相手の感情をある方向(たいていの場合は良い気分)に導くよう振る舞う仕事、そのために自分の感情をコントロールする仕事を指している。この考え方を使うと、現代のアイドルの特徴がより鮮明に見えてくるだろう。

感情労働の議論の出発点であるアーリー・ホックシールド『管理される心:感情が商品になるとき』では、キャビン・アテンダントの働き方が、主な調査対象となっていた。乗客の満足度を高めるという仕事は、頭脳労働・肉体労働であると同時に、まさに感情労働の代表例だ。

Photo by iStock
 

就業人口の73%が、サービス業など第3次産業に従事している日本社会において、ほとんどの人が大なり小なり感情労働にたずさわっていると言えよう(https://www.teikokushoin.co.jp/statistics/world/index05.html)。

そうした感情労働化する社会において、現在、その極北ないし最先端に位置しているのが「アイドル」という職業ではないだろうか。もちろん、人々に娯楽を提供する職業なのだから、本来的に感情労働ではあるのだが、この20年ほどで、アイドルの感情労働の密度は「爆上がり」してきた。

激変するアイドルの活動内容

昨年私は、「アイドルを声援することの系譜学:親衛隊からヲタ芸まで」(丹羽典生編『応援の人類学』青弓社)という文章を書き、女性アイドルのファンたちの変遷を追ったことがある。その時改めて、昭和のアイドルと平成のアイドルとの違いを痛感した。

もちろん、1980年代のアイドルもたいへんだっただろう。しかし、地上波テレビ放送、なかでも「歌番組」が圧倒的な力を持っていた当時、アイドルたちの仕事場は、テレビ・ラジオの収録を中心に、レコーディングや写真撮影のスタジオ、コンサート会場、あとはドラマや映画の撮影現場くらいのものだった。

関連記事

おすすめの記事