2021.05.23
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日本人全員参加のジャンケンで優勝するより低い確率!? 藤井聡太29連勝の真実

藤井聡太論 将棋の未来(3)
変動と混沌のさなかにある将棋界に彗星のごとく現れた、藤井聡太という天才棋士。自身も史上最年少で名人位を獲得した、谷川浩司棋士が、藤井聡太という巨大な才能の謎に迫ることを通して、トップ棋士の持つ能力を明らかにするとともに、新たな時代を迎えつつある将棋の現在と未来を展望した。その強さの本質はどこにあるのか。メンタルはどれほど強靱か…『藤井聡太論 将棋の未来』から抜粋して掲載!

驚異的な勝ち越し数

藤井さんは2016年10月に史上最年少の14歳2ヵ月でプロ棋士となり、翌2017年6月に将棋界の連勝記録を更新する29連勝を達成して、列島に「藤井フィーバー」を巻き起こす。

少々脱線するが、この「連勝記録」については思い出がある。

神谷広志さんが28連勝の記録を達成したのは、1987年だった。その年、関西将棋会館で竜王戦の前身である十段戦リーグの対局をしていた午前中、隣で対局中の先輩棋士が私に話しかけてきた。

「神谷君は日本一になったようだね」前回に書いたように、午前中にはまだ雑談ができた時代だった。

その先輩棋士によると、「日本人全員がジャンケンでトーナメントをすると、優勝するには27連勝が必要」とのことだった。2の27乗は約1億3400万。当時の日本の人口は約1億2200万人だった。

 

神谷さんの28連勝の祝賀パーティーが後日開かれ、発起人を務めた私は「日本一になるには27連勝が必要」という先輩から仕入れた話を紹介した。すると、28連勝目の記録を神谷さんに与えた最後の対局相手の米長邦雄先生が、「27連勝で日本一なら、おれに勝ったから世界一か」と冗談めかして言われたことを覚えている。

さて、最初の「日本一」の話を私にされた先輩棋士とは、実は杉本昌隆さんの師匠、つまり藤井さんの大師匠である板谷進九段だった。「東海の若大将」と呼ばれ、性格も棋風も豪快でおおらかな方だった。30年以上前のことだが、藤井さんとの縁を感じる。

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