これまでの坂元裕二作品に見られなかった変化

現在放送中のドラマ『大豆田とわ子と三人の元夫』(関西テレビ・フジテレビ系 毎週火曜21時〜、以下『まめ夫』)が、オリコン集計のドラマ満足度ランキング(4月27日~5月3日放送を対象)で1位を獲得した。

脚本を担当する坂元裕二は、『最高の離婚』『カルテット』など作家性の高い作風で知られ、「ドラマを脚本家の名前で語られる」数少ない存在の一人だ。じっくり見せる緻密な会話劇や、繊細な感情のやりとり、ちりばめられたディテールがのちのち伏線として利いてくる豊かな構成力など、“ながら見”の隙を与えないその作風は、熱心な視聴者の高い視聴“熱”や視聴“質”に支えられ、放送後はSNSで考察や感想が大いに盛り上がる。

『まめ夫』でも、そのクオリティの高さは健在だ。だが今作では、伊藤沙莉によるナレーションを多用してテンポよくシーンを切り替える、冒頭でその回に起きる出来事のハイライトを見せる、画面に向かって主人公の大豆田とわ子(松たか子)がタイトルコールするなど、従来の坂元作品にはなかった手法が取り入れられていることに気が付くだろう。

中でも“らしくない”のは、主な登場人物の社会的な階層や生活水準の高さだ。

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建設会社の社長であるとわ子をはじめ、弁護士の中村慎森(岡田将生)、ファッション誌の売れっ子カメラマン・佐藤鹿太郎(角田晃広)、奥渋でイタリアンレストランを営む田中八作(松田龍平)と、彼らはいわゆるステータスの高い職業に就き、おしゃれな都心で比較的裕福な暮らしをしている。これまで、社会からはじき出された弱い立場の人々を描くことの多かった坂元作品としては異色とも言える。

こうした作風の変化はなぜ起きたのか。そのことを考える前に、まずは今作でも変わらない坂元作品に共通するエッセンスについて見ていこう。