米国がオンラインで主催した気候変動サミットには、習近平中国国家主席を含む世界各国から指導者が集まり、2030年までの温室効果ガス排出量削減への姿勢を示した(2021年4月22日) Photo by GettyImages

バイデン対習近平、EU+イギリス。脱炭素世界の覇権を握るのはどこだ?

超入門カーボンニュートラル(4)
いまや「カーボンニュートラル」「脱炭素」という言葉をニュースで目にしない日はないと言っていい。新型コロナのパンデミック対応最優先とは一見矛盾するかのように、なぜ各国政府や大企業は気候変動対策に雪崩を打って突き進むのか。その謎を解くと、背景には、世界で6000兆円に上る巨額マネーの圧力と、カーボンニュートラルを次の成長の柱と捉え、自国・地域の産業競争力を強化して覇権を握ろうとする超大国の思惑が見えてくる。この分野の第一人者である夫馬賢治氏の新刊『超入門カーボンニュートラル』(講談社+α新書)から、そうした最新トピックがよくわかる部分をご紹介しよう。

ヨーロッパは世界一厳しい法規制でイノベーションを促す

カーボンニュートラルは、直接的には経済・金融のあり方を転換していくことではあるが、それに伴い、世界の各地域の経済バランスにも大きな変化を引き起こしていく。カーボンニュートラルで減衰する資源に政治経済を依存している地域では、政情不安を引き起こすリスクもある。他方、カーボンニュートラルをスムーズに達成できる地域では、経済繁栄の恩恵にあずかれるようになっていく。

ヨーロッパは、一足早くカーボンニュートラルを掲げれば、産業競争力強化が実現できるはずだと腹をくくった地域だ。その中心にいるのはEU(欧州連合)だが、EUから離脱したイギリス政府も、2050年カーボンニュートラルを標榜している。しかも単なる政策目標ではなく、法定目標としたほうが政策を加速できると判断し、国会に法案を提出し、2019年6月に可決。EUよりも先に、2050年カーボンニュートラルを法定目標化した先進国第1号となった。

EUやイギリスの考え方はシンプルだ。気候変動による金融危機リスクが認識され、世界中で気候変動政策が強化されていくのであれば、時代の潮流を先取りしたイノベーションを実現できた企業が最終的に市場で勝つ。そのため政府としては世界で最も厳しい法規制を課し、企業がカーボンニュートラルのためのイノベーションを実現すべく、R&D(研究開発)や設備投資をおこなうように仕向ければいい。同様に銀行、保険会社、年金基金などの金融機関にも、イノベーションに積極的な企業への投融資を拡大しなければならなくなるような規制を導入すればいい。EUやイギリス政府はこのように考えている。

 

EUは1997年の京都議定書から着実に気候変動政策と産業政策を結びつける地ならしを進め、リーマンショック後には、この考えを先鋭化させた。欧州企業にとって、イノベーションで気候変動時代を制覇するというコンセプトは、もう10年以上も大事にされてきたため、特に大企業では深く浸透している。

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