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トヨタ、日立、日本製鉄にも圧力。5900兆円マネーが脱炭素で企業を選別する

超入門カーボンニュートラル(3)
いまや「カーボンニュートラル」「脱炭素」という言葉をニュースで目にしない日はないと言っていい。新型コロナのパンデミック対応最優先とは一見矛盾するかのように、なぜ各国政府や大企業は気候変動対策に雪崩を打って突き進むのか。その謎を解くと、背景には、世界で6000兆円に上る巨額マネーの圧力と、カーボンニュートラルを次の成長の柱と捉え、自国・地域の産業競争力を強化して覇権を握ろうとする超大国の思惑が見えてくる。この分野の第一人者である夫馬賢治氏の新刊『超入門カーボンニュートラル』(講談社+α新書)から、そうした最新トピックがよくわかる部分をご紹介しよう。

プロ機関投資家が今、狙っていること

気候変動が金融危機リスクを生み出している。そのリスクは今後ますます高まっていく。それを食い止めるためには、人間社会の温室効果ガスを削減すればいいという解決策もわかっている。そして、削減するには、デカップリング(ここでは温室効果ガスの排出量を削減しながら経済成長を実現するという考え方)のためのイノベーションが有効だ。

ここまでわかっていれば、経済成長と国際的な金融システムから利益を得る事業を展開している投資家や銀行にとって、今実施すべきことは何かということは明白だ。温室効果ガスを排出し続けている投融資先の企業や政府に対し、温室効果ガスを削減するように要求しつつ、また自分たちの投融資を、デカップリングのためのイノベーションを起こせる企業に振りわけていけばいい。

この話が具体的にみえる形としてあらわれてきているのが「ESG投資」の潮流だ。ESGとは、環境(Environmental)の「E」、社会(Social)の「S」、企業統治(Governance)の「G」の頭文字をとった英語の造語で、2006年に誕生した。

 

このESG投資がどのように隆盛してきたかは、わたしの前著『ESG思考』(講談社+α新書)に書いているので、詳しくはそちらを読んでいただきたいが、結論からいうと、世の中の投資家は、大規模な投資家であればあるほど、将来を見通してESG投資に傾斜している。

ESG投資が重視するのが気候変動

そして投資家は、ESGを構成する環境・社会・企業統治の3つのテーマの中でも、環境テーマ、とりわけ気候変動を重視している。ハーバード大学は2020年3月に機関投資家といわれるプロの投資家を対象に実施したアンケート調査結果を発表しているが、最も重要なESGテーマは何かと尋ねたら、91%の人が「気候変動」と答え、最多の回答だった。アメリカの巨大銀行モルガン・スタンレーも同じような調査を2020年に実施しているが、やはり最多は「気候変動」で95%だった。

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