この命の物語に向けて、達増拓也岩手県知事はこう感想を寄せてくれている。
「おばあさんパワーと犬パワーのすばらしさを感じました。命と、食べることに、素直に向き合っているのが、おばあさんという存在、犬という存在なのでしょう。
東日本大震災の被害を受けた人や地域を、ストレートに作品にしてくださり、衝撃的な場面もありますが、柴ばあと豆柴太の、食と命の本質に迫る迫力で、読む私たちも救われます。
読後、文末を「でつ」とする豆柴太のクセが伝染します。
『おもしろかったでつ!』」
岩手県では、約5800人が震災被害に及んでおり、その復興に取り組みながら、今はコロナ禍と県をあげて全力で取り組んでいる。
命と食。
生きるということは食べるということ。
相手に食べる元気を贈りたい。相手がおいしく食べてくれたことで、自分も元気になれる。『柴ばあと豆柴太』では一緒に食卓を囲むシーンが多い。
今回が『柴ばあと豆柴太』ストーリー編ひと区切りとなるヤマモト氏は、こう語る。
「今まで豆柴太たちを見守っていただき、ありがとうございました。
ここまで描いてこれたのは、応援してくださった皆様のお陰です。感謝してもしきれません! また、どこかで2作目も読んでいただけるよう精進して参ります」
本編はひと区切りとなったが、柴ばあが豆柴太のためにはじめてのごはんを作る、ふたりの「最初の1ヵ月」を描いた『柴ばあと豆柴太 はじめてのごはん』が、コミック岩手のために特別書き下ろしされた。
震災10年の節目を迎えても、まだまだ東北をはじめとした日本全体の復興への歩みは止まっていない。
「残されるということ、人がなくなるということを描きたい……という思いからスタートした『柴ばあと豆柴太』でしたが、描いているうちに、次第と誰かが覚えてくれている限り、人はなくならないのだ……と感じることができるようになりました。
柴ばあがいつか記憶を失っても、虎太郎や早苗を覚えていてくれる人がいるように……と福音浜の人々を考えましたが、それぞれが私にとって、今はかかせない人々になっています。
自分自身が、大事な思いや感謝は、今しきってもしきれないのかも?と、思いを残す重要性を感じられるようになりました」
家にいることも増え、出かけられない今こそ、ふだん恥ずかしくて口に出せないような「感謝や大切さ・かけがえのなさ」を文章にするチャンスかもしれない。
もしそれを文章にしたら、今度はそれを言葉にしてみませんか?
あなたが口にしたその言葉が誰かを幸せにするかもしれません。
コロナ禍で、出かけられない今、東北の様子を伝える絵本動画ができました。
『柴ばあと豆柴太』(ヤマモトヨウコ著)
2011年3月……ボクと柴ばあは出会った。東日本大震災で家族をなくしたひとりと一匹がよりそうながら暮らす東北のある港町。お弁当屋さんを営む柴ばあと、小さな豆柴犬の
二人暮らしをめぐる四季の物語。東北の温かさと、せつなさが伝わるストーリーと4ページのそれぞれの心象風景できりとった、新しい形のコミックス。2巻では、さらにせつない出来事が……。たのしい4コマをはじめとした描きおろしもいっぱい!NHK「あさイチ」の「特選!エンタ」にておすすめ犬マンガに選定! amazon犬カテゴリ1位など、今、ゆっくり人気拡大中!
作者紹介
ヤマモト ヨウコ
京都府出身。現在、転勤で仙台在住。初連載に緊張中。豆柴太をよろしくお願いします! https://twitter.com/YY0905