岩手県知事が「私たちも救われます」と言った、東日本大震災の記憶を伝える漫画
エンディングノートというものをご存じだろうか?
自分がなくなったあと、今、静かにエンディングノートをつづる人が増えている。
エンディングノートとは、自分に何かがあったときのために、自分の知り合いや、連絡すべき人などの人間関係から、預貯金の記録などのお金の記録まで、あらゆる「自分の記録」を残していく、「自分ノート」だ。
高齢者だけでなく、交通事故など、不慮なことが起こるときに備えて、若い世代でも「自分録」として、記録する人も出てきている。
特に、通帳なども発行されない時代に入り、スマホやパソコンそのものにすべての記録が入っていて、なにもわからないで途方に暮れる……という事態が続出している。
亡くなったときだけでなく、事故による入院などでも、こうした記録はとても役に立つ。
またエンディングノートの意味は、ただ記録だけではない。
それは大事なひとに、ふだん言葉にできない思いを伝える大切な機会になるということ。
日常をともにする相手にほど、感謝や、大切さを伝える機会を逸してしまう。
エンディングノートに向かいあうということは、相手への思いを自分の中で言葉にする大事なチャンスになる。
その残された言葉が、遺された人を救う瞬間があるのだ。
思いを残す重要性
東日本大震災からの10年を描く『柴ばあと豆柴太』。
認知症になった柴ばあは、自分が家族の記憶を失うことを、心から恐れているお弁当屋さんだ。そんなとき、震災の津波で行方不明のままのさなえが残したビデオレターを、豆柴犬の豆柴太が発見するのが前編のあらすじ。
虎太郎が20歳のときに渡すつもりで作ったタイムカプセルに入れられたビデオレター。その一言一言が、記憶が薄れることを恐れる柴ばあの心を救っていくさまは、読者の感動を呼んだ。