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藤井聡太の強さの秘密は、集中力と時間配分のコントロール能力にあり!

藤井聡太論 将棋の未来(2)
変動と混沌のさなかにある将棋界に彗星のごとく現れた、藤井聡太という天才棋士。自身も史上最年少で名人位を獲得した、谷川浩司棋士が、藤井聡太という巨大な才能の謎に迫ることを通して、トップ棋士の持つ能力を明らかにするとともに、新たな時代を迎えつつある将棋の現在と未来を展望した。その強さの本質はどこにあるのか。メンタルはどれほど強靱か…『藤井聡太論 将棋の未来』から抜粋して掲載!

棋士も経験する「ゾーン」状態

人間が集中して考えられるのは二時間が限度だとも言われる。しかし、プロ棋士は小学生の頃から、一般の人に比べて集中して考える訓練を重ねてきている。

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幼い頃の藤井さんについてお母さんが、「将棋のことを考えながら歩いていて、溝に落ちたことが2、3回あった」と振り返っていたが、それも決して大げさではないだろうと思うほどに、彼は並外れた集中力を持っている。

対局の時に彼はカロリー補給のためにチョコレートを持参するが、集中すると食べるのを忘れてしまうそうだ。「意識して食べるようにしている」と言う。

王位戦七番勝負で藤井さんに四連敗した木村一基(かずき)王位も対局後、藤井さんの印象について、やはり同じような感想を述べていた。

「ミスが少ないということとよく考えるなということを感じましたね。考えたい人なんだな、と思いましたね。あと、時間が減ることを気にしていないのかなという感じはしましたね」(第70期王将リーグ特集「棋士とニューノーマル」LivedoorNEWS、2020年9月20日)

藤井さんと2日制で持ち時間八時間のタイトル戦を戦っているのは、2021年4月の時点で木村さんだけだ。それだけに実感を伴ったその言葉には信憑性がある。

 

考えることに没頭すると、人はどうなるか。羽生さんや囲碁の井山裕太二十六世本因坊は、対局中に「ゾーン」と呼ばれる極限の集中状態に入ると語っている。羽生さんによれば、「時間の観念も記憶も薄いので言葉で説明するのは難しい」と言う。

一流のスポーツ選手が時に経験するゾーンに入ると、思考や感情ばかりか周囲の景色や音が意識から消失し、圧倒的にハイレベルなパフォーマンスを発揮できる。感覚が研ぎすまされて、ボールがゆっくり動いて見えたり、時間感覚がゆがんだりすることがあるとも言われる。

1996年、私は羽生さんに七冠目(当時のタイトルは七つ)となる王将を奪取された後、竜王戦七番勝負で羽生さんから竜王を奪取してリベンジを果たした。その第二局の終盤八十手目で、羽生さんの読みになかった捨て駒「△7七桂(先手は▲、後手は△)」を打って一気に流れを引き寄せた。

「△7七桂」は、これまでの公式戦約2230局の中で最高と自負できる一手である。それだけ気が充実していた。信じてもらえるかどうかわからないが、打つ前に盤上の7七のマス目が光って見えた。いま思えば、この時、私はゾーンに入っていたのかもしれない。

藤井さんもおそらくゾーンに入ることがあるのだろう。彼はインタビューに対して、こんなふうに語っている。

「一番集中できている時は、集中しているという実感すらないような状態になり、一分が長く感じる」

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