©服部元信

読み方すらわからない「アインシュタイン方程式」にド文系が挑む方法とは?

アインシュタイン方程式を読む 第2回
ベストセラーとなった科学書の編集を何冊も手がけてきたライターの深川峻太郎さんが一般相対性理論の“数式”へと挑んだ話題作『アインシュタイン方程式を読んだら「宇宙」が見えた』。そのプロローグと第1章を、全6回の短期連載で特別公開いたします。

前回、物理学の神髄に迫るため、「文系だから」を言い訳にして逃げてきた数式に勇気をもって挑むことを決めた深川さん。いよいよ、目標となるその数式と対峙します。
深川峻太郎
ライター、編集業。1964年北海道生まれ。2002年に『キャプテン翼 勝利学』(集英社文庫)でデビュー。『月刊サッカーズ』(フロムワン)、『わしズム』(幻冬舎、小学館)、『SAPIO』(小学館)などで時事コラムを連載。本名(岡田仁志)では著書に『闇の中の翼たち ブラインドサッカー日本代表の苦闘』(幻冬舎)があるほか、フリーの編集スタッフとして手がけた書籍は200点を超える。

これは「冒険」である

では、どんな数式に挑むのか。物理学の数式にもいろいろあるが、やはりここは一般相対性理論の重力方程式、いわゆるアインシュタイン方程式だろう。式そのものはあとで紹介するが、相対性理論は量子力学と並ぶ現代物理学の大黒柱である。それを抜きに宇宙は語れない。アインシュタインの名が出てこない物理学の入門書など、たぶん一冊もないはずだ。

この企画を思いついたのは2015年、アインシュタインが一般相対性理論を完成させてから100年という大きな節目の年だった。「アインシュタインからの最後の宿題」といわれた重力波も米国のLIGO(ライゴ)によって初めて直接検出され(発表は2016年。2017年にはノーベル物理学賞を受賞)、その理論の正しさがますます確固たるものとなった年である。

©服部元信

ところが世間では、いまだに相対性理論を「ワケのわからない新奇な学説」ぐらいに思っている輩(やから)が多いような気がする。もちろん理論自体が難解なこともその一因だが、タテガキの言葉だけで「時間の延び」やら「空間の歪み」やらを説明してきたことも、「自称文系」人間が何となく眉に唾をつけてしまう要因ではなかろうか。一方、物理学者たちは数学の言葉でそれを理解しているから、この理論を揺るぎない大黒柱として使うことができるのだろう。

もう100年も経ったのだから、いいかげん、そのギャップを埋めなければいけない。これまでは専門家が「数式ナシ」の説明でそれを埋めようと努力してきたが、われわれ素人だって、少しぐらい数式に歩み寄るべきだ。文系人間が数式でアインシュタインの考えを理解し、その正しさに納得する。そろそろ、そういう試みがあっていいはずである。

とはいえ、そんな企画が出版社に受け入れられるとは思えなかった。「数式ナシ」がポピュラーサイエンスの常道なのに、あろうことかその数式そのものを真正面から読もうというのだ。しかも専門知識のない素人がそれをやろうというのだから、非常識きわまりない。ただの軽い冗談だと見なされ、一笑に付されるのがオチである。

だから、これを講談社ブルーバックス編集部が受け入れてくれたのは、大いなる驚きであった。ゴーサインが出たときは、「マジかよ! 天下のブルーバックスでそんなことが許されるのか!?」と、ひどく狼狽(ろうばい)したものである。

そして、次第に怖くなってきた。なにしろ一般相対性理論の重力方程式は、アインシュタイン本人も途中でよくわからなくなってしまい、友人の数学者マルセル・グロスマンに「頼む、助けてくれ。このままでは頭がおかしくなってしまう」とすがりつき、最後は危うく大数学者のダフィット・ヒルベルトに先を越されそうになったぐらい、難しい数学を使っているそうだ。そんなの、オレに理解できるわけないじゃん! ラテン語の哲学書を読むほうが、まだ簡単そうな気がしてしまうぞ。

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