©服部元信

数式を知らずして、宇宙がわかるものか! ド文系が挑む「一般相対性理論」への道

アインシュタイン方程式を読む 第1回
“物理学の最高峰に徒手空拳で挑み、数式の吹雪に遭難しかける冒険譚のリアリティ” カブリ数物連携宇宙研究機構機構長 大栗博司)

“数学嫌いが果敢に挑んだ、宇宙の言葉=数式。山登りのような達成感を実感だ!” カブリ数物連携宇宙研究機構初代機構長 村山斉)

『大栗先生の超弦理論入門』『宇宙は何でできているのか』など、ベストセラーとなった科学書の編集を何冊も手がけてきた文系ライターが一般相対性理論の“数式”へと挑んだ話題作『アインシュタイン方程式を読んだら「宇宙」が見えた』。そのプロローグと第1章を、全6回の短期連載で特別公開いたします。

“ちょっとでいいから、数式で宇宙がどう書かれているのかをわかってみたい”

そう思ったことのあるすべての人に贈る、史上初の数式ドキュメンタリーをお楽しみください!
深川峻太郎
ライター、編集業。1964年北海道生まれ。2002年に『キャプテン翼 勝利学』(集英社文庫)でデビュー。『月刊サッカーズ』(フロムワン)、『わしズム』(幻冬舎、小学館)、『SAPIO』(小学館)などで時事コラムを連載。本名(岡田仁志)では著書に『闇の中の翼たち ブラインドサッカー日本代表の苦闘』(幻冬舎)があるほか、フリーの編集スタッフとして手がけた書籍は200点を超える。

「タテガキのサイエンス」の役割

いわゆるポピュラーサイエンスの分野では、本の帯や広告などで、しばしばこんな惹句(じゃっく)が使われる。

「難解な理論を数式ナシでわかりやすく説明!」

ふだんは数式と格闘している各分野の専門家たちが、あえて数式を使わず、巧みな比喩を駆使しながら懇切丁寧に書いてくれた入門書は多い。一般読者の大半はとにかく数式を嫌うので、タテガキの日本語による説明だけで「わかった気分」を味わってもらうのが、このジャンルの常道だ。

じつは私自身、そういう本の編集に何度も関わってきた。その分野の仕事に大きなやり甲斐を感じてもいる。わかりやすい入門書を通じて、宇宙論や物理学の面白さに気づく人が増え、基礎科学に対する理解が深まるのは、すばらしいことだ。とくに日本では近年、短期的に役に立ちそうな応用研究にばかり資金が投入され、そのせいで学術研究全体が土台からやせ細っていると聞く。この危機を克服するには、基礎科学の意義がもっと広く世間に理解されなければいけない。

これは私の持論だが、自然界の真理を探究する基礎科学は、人類にとって最高のエンターテインメントである。「宇宙はどうやって始まったのか」とか「生命はどこから来たのか」とか「われわれ人間の本性とは何か」とか、そんなことを知りたがる生き物は(少なくとも地球上では)人類だけだろう。この知的好奇心を大切にしなければ、知的生命体として生まれてきた甲斐がない。自然界のの解明こそが、全人類共通の目標だとさえ私は思っている。

したがってサイエンスは、役に立つかどうか以前に、まずは「知りたい知りたい!」という人々の欲求に応えることが大事だ。それが科学の存在意義なのだとしたら、研究の成果を広く伝える「タテガキのポピュラーサイエンス」が果たす役割はきわめて大きい。

©服部元信

だから私は、「数式ナシ」の説明が悪いことだとはまったく思っていない。なにしろ私も多くの読者と同じく、数学がひどく苦手だ。大学受験の際に私立文系(受験科目は国・英・社)という典型的ド文系コースを選んだ私は、自慢じゃないが高校で微積分を習った記憶がない。記憶がないどころか、それは選択科目だから自分はやらずに卒業したのだと思い込んでいた。

ところが高校の同級生に聞いてみると、「必修だから全員やってるよ」という。本当にビックリした。私は一体どうやって高校を卒業したのだ。そんなことでいいのか日本の学校教育は! ……と、それぐらい数学と縁遠い人生を送ってきたのだから、仕事で手がけるサイエンス本が「数式ナシ」になるのも当然である。むしろ、私みたいな文学部出のド文系人間が自分に何とかわかるように編集するから、誰にでも読みやすい本になるという面もあるだろう。

それに、サイエンスの話は、数式ナシでも十分にエキサイティングだ。たとえば私は、「惑星ヴァルカン」をめぐる話が大好きである。軽く紹介しておこう。

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