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中国共産党研究の第一人者が語る「反逆者・毛沢東」の圧倒的な破壊能力

ただし、国家建設者としては並だった…

来たる7月1日に、中国共産党創建100周年を盛大に祝う中国。この牙を持った巨龍は、一体どこへ向かおうとしているのかーー。
先週5月11日に『中国の歴史11 巨龍の胎動 毛沢東vs.鄧小平』(講談社学術文庫)を上梓した中国共産党研究の第一人者・天児慧早稲田大学名誉教授と、現代ビジネスコラムニストの近藤大介が、「巨龍の胎動」について、3時間にわたって対談した。以下、3週にわたってお届けする。第1回目は「毛沢東篇」。

中国人にも読んでもらいたい現代中国史

近藤: はじめまして。天児先生とは、何だか初対面のような気がしません。それは、これまでのご労作を拝読してきたためと思います。特に『中国政治の社会態制』(岩波書店、2018年)は名著ですね。「中国について本格的に研究してみたいと思いはじめたのは1970年春の頃だった……」と始まり、「古稀を過ぎ、この3月でいよいよ定年退職を迎えることになった」と結ばれている。中国共産党の本質を学術的に分析した格好の専門書で、今回の新著のベースにもなっていますね。

天児: ありがとうございます。私も近藤さんの著作は読んでいますよ。習近平外交について論じた『パックス・チャイナ 中華帝国の野望』(講談社現代新書、2016年)や、最近上梓されて、アジア各国のコロナ対策比較で話題を呼んだ『ファクトで読む米中新冷戦とアフター・コロナ』(講談社現代新書、2021年)などです。

近藤: 謝謝! 今回の天児先生の新著『中国の歴史11 巨龍の胎動』は、2004年に刊行された「中国の歴史・全12巻」の第11巻に、大幅に加筆して文庫化されたんですね。ちなみに全12巻のタイトルを列挙すると、1.神話から歴史へ、2.都市国家から中華へ、3.ファーストエンペラーの遺産、4.三国志の世界、5.中華の崩壊と拡大、6.絢爛たる世界帝国、7.中国思想と宗教の奔流、8.疾駆する草原の征服者、9.海と帝国、10.ラストエンペラーと近代中国、11.巨龍の胎動、12.日本にとって中国とは何か。

天児: そうです。壮大な中国の歴史を、それぞれの時代の第一級の日本人専門家たちが、最新研究をもとに論じたシリーズです。すでに中国で翻訳出版されているのですが、通史を扱った1~11巻のうち私の巻だけ、翻訳してもらえなかった(笑)。

近藤: 20世紀と21世紀の中国現代史をこれだけ赤裸々に書かれているのですから「発禁」はむしろ「勲章」でしょう。

私は以前、講談社北京という会社に3年間勤めておりまして、このシリーズの中国版発刊は、当時のS社長が必死に売り込んで成功させました。日本人の専門家たちが書いた中国の歴史なのに、中国で15万セットも売れたんですよ。この現象をどう解釈したらよいのか(笑)。

天児: 中国には、中国人の専門家が書いた中国の歴史シリーズが、たくさん出ていますからね。

近藤: そうなんです。一例を挙げると、『図説 中国文明史 全10巻』(邦訳は創元社、2006年)なんか、中国文物学会の叡智を結集させていて、ものすごくレベルが高い。でも最後の第10巻は、『清 文明の極地』で、その後の中国共産党政権時代の文明はどうなっているんだろうと思ってしまいます(笑)。

その意味では、今回、天児先生が書かれた20世紀と21世紀の現代中国史の巻を、中国人にも広く読んでもらいたかったです。

現在、早くもCCTV(中国中央広播電視総台)や新華社通信など官製メディアを挙げて、「共産党100周年キャンペーン」が始まっています。それらは、「共産党の偉業」がギラギラに美化されていて、まさに「歴史は勝者が書くもの」なんだと痛感します。

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天児: そうですね。特にいまの習近平総書記は、毛沢東主席が作った中国共産党政権を、自分が引き継いでいるという意識が強いと思います。

近藤: そのことも含めて、『巨龍の胎動』には、「天児史観」と言うべき独特の筆致で現代中国史が描かれていて、興味深いですね。中でも、この100年あまりの現代中国史を、毛沢東(もう・たくとう)、鄧小平(とう・しょうへい)、習近平(しゅう・きんぺい)という3人の権力者のキャラクターをふんだんに散りばめながら描いています。やはり「歴史は人間が創るもの」ということを実感しました。

 

天児: そうなんです。この100年の中国史を読み解くと、やはりこの3人が浮かび上がってきます。中国語で言うと、「站起来」(ジャンチーライ=立ち上げた)の毛沢東、「富起来」(フーチーライ=富ませた)の鄧小平、「強起来」(チアンチーライ=強くした)の習近平です。鄧小平と習近平の間には、江沢民(こう・たくみん)と胡錦濤(こ・きんとう)がいるんですが、この二人は影が薄い。

近藤: 私も、江沢民と胡錦濤は、鄧小平路線の継承者と捉えるべきだと思っています。というわけで、まず第1回目は、「建国の父」毛沢東(1893年~1976年)について見ていきましょう。

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