NHK『おちょやん』公式サイトより

朝ドラ『おちょやん』、千代が家族を捨てて「“母”を演じる」人生を選んだ理由

その生涯を、自ら選び取った

『おちょやん』は、「母」をめぐる物語だったと思う。ヒロインの千代は、母を求め続けながら家を追い出され、やがて父や夫や劇団員の母役を担わされるものの、本当の母親になれなかったために離婚し、最終的に自ら母を演じることを選び取る。そういう視点でドラマを振り返ってみたい。

千代を縛った「血縁」という鎖

物語の始まりから竹井家に母は不在で、写真の中にしか存在しない。唯一の形見であるビー玉を千代が月にかざすシーンが象徴的に語るように、千代にとって母とは月のように闇をやさしく照らし出す存在である。しかし千代は、母になってくれるはずの継母・栗子に追い出され、母の写真とビー玉を支えとして一人で生きていかざるをえなくなる。

主人公・竹井千代役の杉咲花[Photo by gettyimages]
 

そもそも父テルヲにとって、妻と娘は「どちらか一方しか選べない」という二項対立の選択肢ではなかったはずだが、ここで栗子が家族の面倒をみてきた千代になり替わろうとする点は押さえておきたい(結局栗子はテルヲに愛想をつかして出ていくのだが)。

捨てられたのではなく千代のほうが家を捨てたのだという、去り際の千代のせりふは、千代が父を捨てただけではなく、母を持つことを諦めるという、子どもにとってはあまりにも辛く孤独な決意である。

しかし道頓堀のお茶屋岡安で、千代は女将のシズと出会う。シズは厳しくもやさしく千代を育て、疑似的な母親の役割を果たす。千代が年季が明けてもシズのもとで働くことを決めたのは、そこで安らぎを得たからにほかならない。

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