母への罪悪感を抱えながら…

入所は大変だった。
私と息子、私の弟の3人で付き添ったが、車いすごと載せられた施設の送迎バスの中で泣き出した。連れ添っていた私に「方向が違う。この道は私の家に行かないよ」と言う。すでに医師や弟から説明を受けて納得していると思っていた私を混乱させた。
「ママ、仕方がないんだよ。ママは医療的な介護が必要だから家では見られないの」
いりょうてきな、かいご。そんな言葉で理解するわけがないとわかっていても、私にはそれしか言えなかった。

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施設について説明を受け、玄関のところで別れた。たくさん泣かれた。なんとか説得して別れたが、私たちが帰宅する車に乗り込みしばらくしたら施設から弟の携帯に連絡が入った。母が自分の携帯でタクシーを呼んだり、「絶対に帰る」と収まらないらしい。

修羅場だった。

私たち3人は施設に舞い戻り、母と向き合った。
「私を捨てて!酷い子どもたち。育て方を間違えた」
わがまま言わないで。
「自分だけ幸せになって」
子どもの幸せを喜べないの?
「うるさい。育ててもらった恩も忘れて」
壮絶な親子げんかになった。

弟が感情的になると、私がまあまあと落ち着かせ、私がヒートアップすると、弟が「姉ちゃんもこうやってコロナ禍のなかを東京から来たんだぜ」となだめてくれた。母への罪悪感をがっつり二分の一にすることで、私たち姉弟は持ちこたえていた。ひとりだったら、逃げ出していたかもしれない。

話し合いの末、6つの幼女のような泣き顔で母は手を振った。

誰にとっても辛いことでも、何かしら決断しなければならない Photo by iStock