2021.05.18

日本の「大麻政策」、じつは「大いなる矛盾」が隠されていた…!

宮台真司、大麻を語る
宮台 真司, 大麻博物館 プロフィール

「統治」のための大麻、「解放」のための大麻

博物館 「ドラッグと統治」という興味深いキーワードが出ましたが、どのような関係性があるのか、もうすこしご説明いただけるでしょうか?

宮台 ドラッグには、「統治」に役立つ側面があるということです。

大麻を解禁した先進国では、第一に生活の質を上げる医療や、変性意識を呼び込む娯楽として「大麻が個人の幸福に役立つ」との関心が生まれました。第二に、大麻を入口にしたハードドラッグ・ディーラーの活動を抑止するための合法化が議論されました。第三に、新たな税源にしようという議論が生まれました。第四に、大麻市場が大規模な投資を可能にするとの議論も生まれました。幸福・犯罪・税収・経済など社会のあらゆる側面に役立つのであれば、大麻が統治に役立つことを意味します。これが「統治のための大麻」です。

他方、「統治」とは別に、ドラッグにはご存じの通り「解放」という側面があります。

1960年代の後半からロックを含めたユースカルチャーの展開に伴い、アメリカでは大麻などのドラッグが「解放的関心の象徴」になりました。”Another way of life(違った生き方をしよう)”をスローガンに、「近代の奴隷にならず、自己を解放し、心身の働きを変えなくてはいけない」という考え方が拡がりました。

LSDを使った研究で知られるハーバード大学のティモシー・リアリー博士は、「心の働きが近代のシステムによって浸食されている状態を自分で立て直すためにドラッグを使う」という考え方を提唱しました。そうした思想が1970年代以降も支持されてきました。加えて、アメリカには大麻の所持や吸引を厳罰化した歴史がないので、大麻に対する心理的な抵抗が少なく、1960年代後半以降に大学教員をやっていたようなインテリ層は、全員大麻を経験していると言っても過言ではありません。

 

その後、ドラッグを使わない解放を目的とする「ドラッグレスハイ」「ナチュラルハイ」というアイデアも拡がりました。これにはベトナム戦争などの社会状況が関係します。帰還兵が凶悪犯罪を起こしたり、薬物中毒者になるケースが多発したため、政策とは関係なく薬物が好ましくないと考えられるようになったのです。

サバイバル・トレッキングで自分を危機にさらす。コンピューター音楽とグラフィックスで脳を活性化させる。ヨガで心身を解放する。そうした営みがドラッグによる解放の代替として拡がりました。コンピューターカルチャーとドラッグカルチャーの間には、このような歴史的な関係性があります。

関連記事