日本人が知らない、超大国と巨大企業が雪崩を打って脱炭素に向かう理由

超入門カーボンニュートラル(1)
いまや「カーボンニュートラル」「脱炭素」という言葉をニュースで目にしない日はないと言っていい。新型コロナのパンデミック対応最優先とは一見矛盾するかのように、なぜ各国政府や大企業は気候変動対策に雪崩を打って突き進むのか。その謎を解くと、背景には、世界で6000兆円に上る巨額マネーの圧力と、カーボンニュートラルを次の成長の柱と捉え、自国・地域の産業競争力を強化して覇権を握ろうとする超大国の思惑が見えてくる。この分野の第一人者である夫馬賢治氏の新刊『超入門カーボンニュートラル』(講談社+α新書)から、そうした最新トピックがよくわかる部分をご紹介しよう。

環境対策に積極的ではなかった経団連までが、なぜ?

人は新しい情報に触れたとき、自分に都合よく解釈してしまいがちだ。このことを「確証バイアス」と言ったりする。わたしたちは新しい情報に出くわしたとき、自分の既存の知識を用いて都合よく解釈し、きちんと理解をする前に勝手に内容や善悪を判断してしまったりする。

「カーボンニュートラル」もその一つだ。たとえば、これは新しい流行語(バズワード)だと言う人がいる。こういう人は、「カーボンニュートラル」が、2006年というかなり前に、世界的に人気のある英語辞典『新オックスフォード米語辞典』で「今年の言葉」に選ばれた事実を知らなかったりする。カーボンニュートラルという言葉は、世界的に急に生み出されたわけでもなんでもなく、ただ単に最近まで日本人が知らなかっただけだ。

この「カーボンニュートラル」という環境用語が、急にメディアの中で頻発するようになった。しかも、政治の世界だけではなく、経済の分野でだ。

 

日本で最も力のある経済団体である日本経済団体連合会(経団連)は、従来、環境政策には積極的ではなかった。むしろ環境政策は経済の足枷と認識されてきた。地球温暖化で悪者にされている化石燃料についても、天然資源の乏しい日本は、経済大国を維持するにはエネルギーを調達するため化石燃料を積極的に確保すべきだと考えてきた。

しかし2021年2月には、中西宏明・経団連会長(当時)が「(エネルギーの)安全性を前提とした安定供給や経済性よりもカーボンニュートラルを最優先にしなければいけない」と発言している。そして、カーボンニュートラルを積極的に進めるよう、他の経団連加盟企業を説得していることまで明らかにしている(2021年2月22日、日本経済新聞インタビュー)。これほどまでに、経済界にとってカーボンニュートラルは密接なテーマとなった。

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