“慰安婦問題”を追及する韓国に刺さった、「ベトナム人虐殺」というブーメラン

被害者の訴えは、事実上退けられた
羽田 真代 プロフィール

被害者が勝訴したものの…

2017年8月、虐殺の生存者であるタン氏の代理人団は、国情院に対して情報公開請求を行った。「1969年11月、中央情報部(現在の国情院)が青龍部隊1大隊1中隊の3人の小隊長を調査した際の、報告書や尋問調書といった文書のリスト」の公開を求めたが、国情院が拒否したことで、同年11月に訴訟へと移行した。

1審と2審ではタン氏側が勝訴し、情報公開は正当という判決が下されている。しかし国情院は「当該資料が公開されると、国の重大な利益を著しく害する恐れがある」「調査当事者のプライバシーが侵害される可能性がある」などと理由を述べて、公開を拒否してきた。

3月25日、最終審の最高裁判所は「韓国政府が虐殺事件の関係者を調査したか否か、といった歴史的な事実を確かめるために必要な史料であり、公開するだけの価値があると認められる」と判断し、上告を棄却。タン氏側がの請求を認めて、国情院に対して情報公開を求める判決を下した。

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最高裁の確定判決を受けたタン氏と代理人は、3年8ヵ月法廷闘争を経て、ようやく資料が公開されると安堵したという。だが4月5日、開示された資料に書かれていたのは、次のたった15文字だった。

チェ・ヨンオン(釜山)、イ・サンウ(江原)、イ・ギドン(ソウル)

公開されたのは、ベトナム戦争に参戦した韓国軍青龍部隊の小隊長3名の名前と、調査当時に彼らが住んでいた場所だけである。3名の生年月日などは非公開とされた。

こんな情報だけではとうてい虐殺に関する歴史的事実を確認できず、事実上の「公開拒否」に等しい。タン氏の代理人団は真相究明に向けて、国情院が持つ関連記録の公開を要求した。

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