日本の若者は「キツい」状況にある…アジア諸国との比較から見える「現実」

宗教の復権が起きるかもしれない

YouTubeなどで閲覧できるポップカルチャーの動画からアジア各国の若者の自意識・国民意識を探る――そんな興味深い視点から学生相手に行っている講義をもとに『自分探しするアジアの国々 揺らぐ国民意識をネット動画から見る』(明石書店)を刊行した国際政治学者の小川忠・跡見学園女子大学教授。

取り上げられている動画は、悪徳警官にラッパーが殺される姿を描くことでドゥテルテ政権の強権姿勢を暗に批判したフィリピンの映画『Respeto』や、人びとから崇敬を集める僧侶の破戒を描いて社会的な議論を巻き起こしたタイの映画『アーバット』、ドイツ留学中のインドネシア人YouTuberが本国および世界各国に散らばった同胞に向けて「国民歌謡」を静かに歌うAngklung Hamburg Orchestra ft. Gita & Paulus「Tanah Air」等々……そこから見えてくるのはわれわれが抱くステレオタイプな各国のイメージとは異なる姿だ。

ビジネスでアジアに関わる人はもちろん、アイデンティティやキャリアに悩める若者、欧米の文化と自国文化との関係に関心のある人まで、目を向けるべきものがそこにある。小川氏に訊いた。

 

国際理解に「動画」が有効である理由

――YouTubeで見られる動画をきっかけにした各国理解は有効だという実感はありますか。

小川 私は1982年から日本の文化外交を担う国際交流基金に35年間務め、2017年から跡見学園女子大学文学部教授として教鞭を執っていますが、最初にインドネシアに行ったのが1985年、一度目の駐在したのは89年から93年でした。当時、インドネシアは『おしん』ブームで「東アジアの女性」=「辛抱強くて勤勉な日本人」のようなイメージがありました。それが30年経った今ではインドネシアではK-POPや韓流ドラマのほうがはるかにポピュラーになり、韓国の化粧品がよく売れるようになりました。そのくらい国や地域のイメージを左右するものが文化であり、20〜30年もすればかなり変化するものです。

私が教えている大学でも、学生たちは「アジアと言えばK-POP」という感じで、それ以外の国の生の文化を見たことがない人が大半です。そんな学生に口で「こうなんだ」と言うだけでは伝えるのが難しい一方で、たった4〜5分でもアジアの新しい文化芸術の映像を見せると「アジア観が変わった」と言うほど劇的な反応があります。

関連記事