2021年4月に開催された上海モーターショー(Photo by gettyimages)

IT大手も続々参入ーー「爆速」で進化し続ける中国自動車産業のいま

CASEをめぐる中国のダイナミズム

世界の新車販売の約3割を占める世界最大の自動車市場、中国。「2025年までに自動車製造強国になる」などの野望を掲げるなか、中国の自動車産業界は新しい時代にいかに適応しようと努めているのだろうか。日々刻々と変化するグローバル自動車産業の変遷、および変化待った無しの日本の自動車産業への提言を記述した現代新書の最新刊『日本車は生き残れるか』より、シリコンバレーを中心にグローバル自動車産業の構造変化を見ている桑島浩彰氏が中国の自動車産業の実情を活写した第5章「いま中国で何が起きているのか」を抜粋してお送りする。

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中国「EV大国」時代がいよいよ始まる

コロナ禍から速やかに経済活動の復活を果たした2020年の中国を揺るがしたのは、やはりテスラだった。

「2025年までに自動車製造強国になる」「同年までに新エネ車(電気自動車・プラグインハイブリッド車・水素自動車などを指す)の割合を20%まで高める」「2035年には新エネ車の割合をさらに60%にする」という大目標を掲げている中国政府は、新エネ車の購入に大量の補助金を投入した結果、一時期は国内で500社近くものEVメーカーが乱立したとされ、「EVバブル」の様相を呈していた。

2020年の中国での新エネ車販売台数は、前年比11%増の約137万台(電気自動車112万台、プラグインハイブリッド車25万台)まで増加した。この年、同国内で販売された自動車の総数約2530万台(前年比1.9%減)の約5%に過ぎないが、着実に伸びている(ちなみに同年の日本での自動車新車総販売台数は前年比11.5%減の約460万台である)。

そして、その新エネ車のうち、テスラは実に12万台強を中国国内で売った。同社の2020年における全世界の販売台数は約50万台であり、実に4台に1台を中国で売った計算になる。

イーロン・マスク氏。上海ギガファクトリーにて(Photo by gettyimages)

2019年に、わずか11ヵ月という驚異のスピードで上海に建設されたテスラの巨大な生産工場「上海ギガファクトリー」は、年間50万台強の生産能力を持つ。2021年には現在生産中の「モデル3」に加え「モデルY」も30万台弱を生産する予定で、今後は欧州や東南アジア、オーストラリア、日本への輸出を予定しているとされる。

中国政府が掲げた野心的な目標からはまだまだ遠いが、いよいよ中国でも新エネ車生産拡大の火が付いたと言えるだろう。

 

巨大EVスタートアップの勃興

2020年、中国の自動車業界に起こった出来事でもう一つ注目すべきは、バイドゥ(百度)、アリババ(阿里巴巴)、テンセント(腾讯)の3社(以下BAT)のような巨大ITプレイヤーに資金的に支えられ、500社の生存競争を勝ち抜いてきた巨大EVスタートアップの勃興だ。

具体的には、NIO、LIオート(理想汽車)、シャオペン・モーターズ(小鵬汽車)、WMモーターなどが挙げられる。2018年に米国で株式上場を果たしたNIOを筆頭に、この4社だけで約80億ドル(約8800億円)もの巨額な資金を調達している。

2018年に米国で株式上場を果たしたNIO(Photo by gettyimages)

その一方で、中国国内で今後年60万台以上のEVの生産を予定しているフォルクスワーゲンや、EVの新型SUVを投入するダイムラー、後述する中国自動車メーカーのBYDとの協業を発表したトヨタなど、グローバル大手の動きも見逃せない。

中国では、いよいよ本格的な「EV大国」時代が幕を開けようとしている。

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