軍事パレードに登場した弾道ミサイル(2017年4月15日撮影)

菅政権は日朝交渉の頼みの綱「ストックホルム合意」を生かせるか

バイデン政権は「段階的アプローチ」を選択

輸入再開の深刻な理由

北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)に関して、さまざまな動きが出てきた。

北朝鮮そのものの動きとしては、輸入を一部再開したことだ。北朝鮮は、国連安保理による厳しい制裁と日米韓による独自制裁を受けている。それだけでなく大規模な自然災害に繰り返し襲われ、新型コロナウイルスの国内への流入防止のために、海外との人と物の行き来をほぼ停止してきた。

4月8日には朝鮮労働党の末端組織責任者会議で、金正恩(キム・ジョンウン)総書記は、「苦難の行軍」の実行を表明した。1990年代後半に水害と干ばつで多くの餓死者を出した際に、これを乗り切るために使われたスローガンだ。その当時に取材で訪れた私は、平壌(ピョンヤン)の高級ホテルが外国人に対してさえ、あまりにも質素な食事しか提供できないことに驚いた。

今年の2月下旬にロシアの外交官とその家族が手押しトロッコで出国したように、現在の食糧や生活必需品の不足が深刻なのは確かだ。それでも北朝鮮経済が、ここまで持ちこたえてきたことは驚異である。それは長年にわたって、外国に頼らない「自力更生」を進めてきたからだろう。

「自力更生」を掲げ、国内の原料でさまざまな製品を開発してきた北朝鮮でも、生産できないものがある。2019年10月に「金カップ体育人総合食品工場」での取材の際、「チョコレート製造のためのココアのように輸入をゼロにすることは不可能」と案内員は語った。

田植え機を使っての田植え(2019年5月25日撮影)

私は北朝鮮農業の取材を、各地で何度も時間をかけて行なってきた。北朝鮮は、有機肥料生産や自然流下式水路による灌漑といった大規模な農業改革を実施している。だが農業生産を増やすためには、化学肥料や農薬だけでなく、畑を覆うための「マルチフィルム」といった農業資材の輸入が必須なのである。

そのため北朝鮮は、新型コロナウイルスの国内流入を防ぎながら、春の種まきシーズンに最小限の輸入を再開せざるを得なかったのだ。3月には化学肥料約900万ドル(9億9000万円)分が、中国から海上輸送されたという。

 

だが、輸入した物品を消毒するための施設は限られているようで、コロナ前の輸入量に戻るのがいつになるのかは分からない。

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