女性は少量の飲酒でも乳がんリスクが増加

一方、女性は少量の飲酒でもリスクになることが示されています。2002年に発表された、アルコールとタバコの乳がん発症との関連を、53の研究を統合し、5万8000人以上を対象に調べた研究では、1日のアルコール摂取が10g(純アルコール換算。10gはワイングラス1杯弱程度)増えるごとに、7.1%乳がんの発症率が高まるという結果が出ています(※10)

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ただ、日本人女性を対象とした研究では、週にエタノール換算で150g以上の飲酒者では乳がんリスクの上昇を認めていますが、ときどきの飲酒や、150g未満の飲酒では、はっきりしたリスクの上昇はみられませんでした(※11)。ちなみに、エタノール換算で150gはワインなら約14杯、ビールなら大瓶約7本です。

結局、アルコールは飲んでいいの?

これまで紹介したものをまとめると、以下になります。

「ワインを飲むから、フランス人は心筋梗塞が少ない」といったフレンチ・パラドックスは、ワインやポリフェノールといった、単独の食品・成分に関するエビデンスとしては不十分です。「ワインにはこの成分があるから体にいい」と、ただちに思い込むのも早計でしょう

また、少量の飲酒は、心臓病や糖尿病など一部の病気に関しては、減らす効果があるかもしれませんが、女性では少量の飲酒でも乳がんリスクを高めるという研究結果もありますので注意が必要です。

一方で、「もっとも健康にいい飲酒量はゼロ」という研究結果もそのまま鵜呑みにすることもできないと思います。同研究は世界各国のデータを元にしたものですが、交通事故や感染症、メンタル疾患などのアルコールによる被害状況は、背景となる文化によっても異なる可能性があります。そう考えると、日常生活に悪い影響のない範囲の飲酒量では、一概に「少量でもやめるべきだ」とは言えない面もありそうです。

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以上を踏まえて現時点の結論としては、「リスクについて理解し、どの程度であれば受け入れられるか」を自分自身で決める、というのが現実的でしょう。例えば、エタノール換算で週150g未満を目標とするなら、ワインは1日2杯まで、週に1日は休肝日をつくる、といったように。

「飲酒をすれば100%がんになる」というものでもありません。飲酒のもたらすメリット(もともとお酒が好き、友人づきあいができる、など)や、これまで述べてきたデメリットを十分に吟味した上で、どの程度飲むのかを決めるのがよいでしょう。

※本記事は松村むつみさんの『「エビデンス」の落とし穴』(青春新書インテリジェンス)より一部を抜粋し著者の許可のもと編集を加えたものです。