緊急事態宣言下で「家飲み」の機会が増える中、アルコール依存症の増加が懸念されています。そんな中、アルコールがそもそも健康にどれほどの影響を及ぼすのか気になっている人も多いことと思います。

「酒は百薬の長」という言葉が象徴するように、アルコールは「少量なら体にいい」と言われてきました。しかし近年、それを否定するかのような論文も登場しています。「アルコールは少量なら健康にいい」と 「アルコールは少量でも健康に悪い」、いったいどちらが正しいのか、医師で医療ジャーナリストである筆者が最新の研究から考えてみたいと思います。

有名な「フレンチ・パラドックス」

〔PHOTO〕iStock

まず、「アルコールは少量なら健康にいい」を肯定する説から検証していきたいと思います。有名なのが、「フレンチ・パラドックス」です。

フランス人は、肉やチーズなどの動物性脂肪を多く摂取するにもかかわらず、ヨーロッパの他の国に比べると、心筋梗塞や脳梗塞などの血管疾患で死亡する人が少ないというデータが出たことで、この矛盾(パラドックス)に対してさまざまな考察がなされました。

フランスのルノー博士は、1992年に『ランセット』(最も評価の高い世界5大医学雑誌の1つ)で、フランスでは動物性脂肪の摂取が多くても心疾患が少ないのは、ワイン(特に赤)の消費量と関連がある可能性を指摘しました(※1)。それによって「赤ワインは体にいい」と信じられるようになり、赤ワインブームが起こりました。事実、コップ2杯程度の少量飲酒では、心臓病や脳梗塞になりにくいという研究があります(※2)

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赤ワインの健康効果には相反する研究結果が

赤ワインに含まれる成分では、抗酸化物質であるポリフェノールが注目を集めています。ポリフェノールの中でも、レスベラトロールという種類のものに、発がん抑制作用や、糖尿病を予防する作用があるのではないかと考えられてきました。

レスベラトロールは作用機序の面から、糖尿病やがん、高血圧、認知症などの幅広い病気に効果があるのではないかと期待され、動物実験では糖尿病への有効性が示唆されています(※3)

ただ、レスベラトロールサプリメントのヒトへの投与も試されてはいますが、本当にヒトで糖尿病などに有効性があるのかはまだはっきりしません(※4)。また、これまでの研究では、赤ワインには血圧低下効果があるという研究と、ないという研究があり、相反する結果も出ています(※5、6)。巷では、「レスベラトロール」「ポリフェノール」の効果をうたった健康法や食品がありますが、試験管や動物実験の結果を強調したものが多いのが実情です。