警察官たちが酔い潰れて寝てしまうと…

警察官たちは勤務中なのか自宅に帰る道中なのかよく分からなかったが、べろべろに酔っていた。でも、この列車で一番安全な場所なのは間違いない。少なくともプロの盗賊は警察官だけは狙わないだろう。

「トイレに行きたくなったら絶対一人で行っちゃダメだよ。この列車のどこに犯罪者が潜んでいるか分からない。夜行列車は盗賊だけじゃない、暗いのをいいことに痴漢し放題なんだ」思わず身震いした。勇気を出して乗務員に声をかけてよかった……。

異国では身の安全を確保することが第一だ。その為には、とにかく最善を尽くして行動あるのみ。世の中には治安の良い国がたくさんあるというのに、なぜ盗賊や痴漢が出るような恐怖の夜行列車に乗っているのかよく分からないが、自分で望んで来た道だ。そういう場所にいるのだから安全を確保するために気が弱いとか恥ずかしいとかそんなことは言っていられない。トラブルに巻き込まれないために、頼れそうな現地人に話しかけることは凄く大事だ。

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警察官たちは泥酔してドンチャン騒ぎ状態。酒をしきりに勧められたが、ここで酔ったら、警察官たちが途中下車した後で自分の身を守れなくなる。

そうこうしているうちに、警察官たちが酔い潰れて次々と寝てしまった。シーンと静まり返るコンパートメント。何となく寝てはいけないような気がして、膝を抱えながら眠い目をずっと開き続けていた。

暫くして、ガチャガチャとドアを開けるような音がした。咄嗟に座席の下へ隠れようと思ったが、全員が爆睡していると思われたら逆に危険かもしれない。先が尖ったボールペンを両手で握りしめて、怯まずにドアの方を睨み続けた。

すると、コンパートメントがゆっくりと開き、暗い空間の中で2つの瞳と視線が合った。寝たふりをしてはいけない、怯んではいけない。微かなライトが私の顔に当たり、2つの瞳はコンパートメントの中にいる人物たちの状態をライトで確認すると、再びコンパートメントを閉めて静かに立ち去って行った……。あぁ、助かった! 

盗賊たちもわざわざ武器を持つ警察官たちとのバトルは避けたいだろう。

東欧の列車は落書きだらけだ。写真提供/歩りえこ