武器を持ったプロの盗賊が乗っている⁉︎

「なぜドアを開かないようにするんですか?」

『当たり前だろう!?この辺を走る夜行列車はプロの盗賊が乗っているんだ。コンパートメントを外から開かないようにしないと寝ている間に盗賊が侵入して全部持って行ってしまうんだよ!奴らは武器も持っているから抵抗できない。そのためにこの重い鎖を持ってきたんだ』

え! そうなの? プロの盗賊が乗っているなんて! しかも武器……恐怖列車じゃん……。でも、このおじさんが安全な人という確証も持てない。寧ろ、このおじさんと密室で朝までいる方が身の危険が及ぶかもしれない。

『ちょっと待ってください。寝る前にトイレだけ行っていいですか?』貴重品を胸に抱えて、猛ダッシュで乗務員を探した。とにかく身ぶり手ぶりで「密室で男性と2人きりは怖いから、安全な複数の乗客が座っている座席に移りたい」と懇願した。

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乗務員は私の怯えた表情を見て、何となく状況が理解できたのか「わかった、この列車で一番安全な場所に移動させよう」と言ってくれた。おじさんがいるコンパートメントまでバックパックを取りに行き、乗務員の案内に従って後ろからついていく。

「さあ、ここがこの列車で一番安全な場所だ。君一人では確実に盗賊のターゲットになる。一緒に朝まで過ごし、彼らが降りたらまた複数の人が乗っている場所に移動するんだ。君一人でいることが一番危ない。地元客に守ってもらうんだ。いいね?」『はい!ありがとうございます!』

案内されたコンパーメントのドアを開けると4人の屈強な大男たちが座って酒を飲みながらカードゲームに興じていた。男たちは皆同じ制服を着ている。日本人からすると見慣れない制服だったが、どうやら警察官のようだ。

「この子を頼んだよ」乗務員はそう言うと、ドアを閉めて立ち去っていった。

暗いブカレスト北駅からベオグラード駅に向けて鉄道が発車した。写真提供/歩りえこ