デビュー35周年を迎えたテノール歌手の錦織健さん。20年ほど前に取材した際、オペラ歌手を目指す若者に、激励のメッセージをいただいた。舞台やテレビで活躍する錦織さんが、クリーニング店でアルバイトしていたこと、地方のコンサートに出演して収入につなげることを聞き、そのしなやかさとプロ意識に感嘆した。昨年、コロナ禍でコンサートがない間は、思う存分、歌の練習とプレステに励んだという。4月25日、三度目の緊急事態宣言が出され、中止や無観客開催となったイベントも多い。錦織さんは、「仕事がなくなった時に備え、もう一つの仕事プランを持つこと」を勧める。これまでのキャリアと、コロナ禍における音楽活動の可能性について、インタビューした。

写真提供/ジャパン・アーツ
錦織 健 1960年生まれ。テノール歌手。島根県出雲市出身。国立音楽大学卒業。文化庁在外研修員としてミラノに、また五島記念文化財団の留学生としてウィーンに留学。様々なオペラに出演、ソリストも務める。NHK紅白歌合戦など、テレビやラジオ番組への出演も多い。2002年からはオペラ・プロデュースも始めた。2021年05月17日、東京オペラシティコンサートホールで、テノール・リサイタル「日本の歌だけを歌う」開催予定。
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研究生の頃はクリーニング店でバイト

オペラ歌手であり、コーヒーCM「違いのわかる男」に出演し、ポップスやアニメの主題歌を歌い、プロデュース公演を手がけ、多様な活動をしてきた錦織さん。

「大学を出て2年、二期会の研究生をしていた時に、クリーニング店でアルバイトしました。二期会のレッスン以外の時間、週3~4日だったかな。今、そのお店はもうないのですが、アイロンがけが上手になりました。その後、オペラデビューしてイタリアに留学。本場を見て、オペラ歌手だけで生計をたてるのは、困難だと知っていました。

無我夢中で、気がついたら歌手になっていました。歌手として生活できると思ったのは30歳ぐらいの時です。それまでは、一生、この仕事ができる自信はなかったです」

上京して歌手になるのが夢でした

錦織さんは、オペラ歌手として活躍するだけでなく、各地でたくさんのコンサートに出演してきた。お客さんを楽しませたいという気持ちが強く、ロックや親しみやすいオペラを歌っている。

「私の人生最初の目標は、恥ずかしくて言えなかったけれど、『上京して歌手になること』でした。それから、芸術至上主義ではなく、お客さんにどうやって楽しんでもらうか、様々な挑戦をしてきました。

コンサートは、エンタメとして楽しんでもらいます。バロックからロックまで、お客さんに喜ばれる曲を歌います。

オペラ・プロデュースも手がけました。劇団四季みたいに、興行に主眼を置いたオペラをやりたくて、トライしました。本番の回数をこなし、出演者にギャラが入るようにしたいと」