収入が減っても、暮らしの満足度は向上

大企業の部署統括からフィンランドに移住して起業家となったことで、小菅さんの年収は大幅に減った。しかし、「生活の質が向上したことにより満足度が高まった」と小菅さんは言う。

「フィンランドは物価が高いとはいえ、生活必需員は案外手軽に手に入ります。東京に住んでいたときと比べると外食の機会が格段に減りましたが、それ以外の生活はさほど変わっていないかもしれません。

何より時間を思い通りに使えるようになり、子どもたちと過ごす時間を十分に取れるようになったため、思いきって移住してよかったと思っています。子どもを愛する私の気持ちは移住前から変わりませんが、子どもからすると時間を長く共有することで、以前より親の愛情を感じられるようになったかもしれませんね」

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わんぱくな息子たちに振り回される日常を自身のTwitterに投稿し、コミュニケーションのネタにすることも

フィンランドで暮らす筆者も、「お金を使わなくても案外楽しめるものだな」と小菅さんと似たようなことを感じている。都市でも自然が豊かなこの国では、森や海を眺めながら散歩するだけで贅沢な気持ちになれるし、言語がわからない分、消費欲をかきたてられる場面が少ないのかもしれない。

小菅さんが現在のようなライフスタイルを実現できているのは「経営者になったから」という理由も大きいが、移住による環境要因も影響しているという。

「ここでは言わずもがな家族が最優先という価値観があるため、育児や家族との用事で仕事ができないことに言い訳をせずに済みます。罪悪感なく打ち合わせの予定を調整できたり、休みを取れたりするのは非常に快適です」

環境、立場、時間の使い方を一新したことで、小菅さんは満足度が高く持続しやすいワークスタイルを手に入れた。訴訟トラブルなど不運にも遭遇したが、前向きにとらえれば「どこに行ってもやっていける」という自信につながっているという。

現在は現地企業の日本進出にまつわるプロジェクトを積極的に進めるほか、イノベーション創出を目的とした資金調達等を行う公的機関・Business Finland(ビジネスフィンランド)やエストニアの経済発展を目的とするエストニアの政府機関・Enterprise Estonia(エンタープライズ・エストニア)の登録アドバイザーも務める。一時はコロナによる影響を受けたレストラン事業も順調に売上を伸ばしている。

筆者も、海外への長期滞在経験がなく語学スキルも未熟なまま「えいや!」と移住したひとりだが、とにかく止まらずに動き続けるなかで想像以上にチャンスに恵まれていると感じる。不安や恐怖がないといえば嘘になるが、より大きな目標に挑みたいというワクワク感がこれほど膨らんでいるのは自分でも驚きの変化かもしれない。

編集/大森奈奈

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