異国での「居場所」づくりが仕事になった

トラブルは確かに苦い経験だったが、異国での幸運な出会いによりビジネスの発展もあった。小菅さんが住むタンペレには、当時、定期的に日本食のポップアップレストランを開いていた日本人オーナー、藤川貢司(ふじかわ こうじ)さんがいた。

日本で大手コンビニチェーンやレストランの商品開発に10年以上携わっていた藤川さんは、フィンランド人である母の故郷、タンペレでレストランをオープンしたいという夢を持って、2014年に妻と共にフィンランドへ移住。現地で夢の実現に向けて奮闘していたそうだ。

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「彼が作る和食のフルコースがとてもおいしくて、顧客としてたびたび食べに訪れていました。そのうちに彼の夢を応援したいという気持ちが芽生え、『私にできることがあったら声をかけてほしい』と伝えました」

藤川さん(左)の夢に相乗りするカタチで、レストランを共同創業。良きパートナーとなったおふたり 写真/小菅さん提供

その後、運良くレストラン物件を譲り受ける話が浮上し、ふたりは共同創業者として、2019年に日本食レストラン「Fujimi」をオープンした。飲食業経験が豊富な藤川さんが総料理長と現場の仕切りを、小菅さんがバックオフィス業務を担当しているそうだ。

「グイグイいく私とソフトな印象でコツコツ積み重ねるコウジさん(藤川さん)。性格は真逆ですが、お互いに強い意思はありつつリスペクトし合えていて、良いコンビじゃないかなと思っています」

藤川さんにも話を聞いてみると、同じビジョンを持って共同経営するメリットを感じているという。

「レストラン運営といっても、商品開発や現場運営だけでなくマーケティングに事務作業などやるべきことは多くあります。ヨシさん(小菅さん)の支えのおかげで、私は自分の役割に思う存分、集中できていると思います。

ツラい出来事があったときに、メンタル的な負担が半分になることも助けられているなと。ダイバーシティチームだと、日本にいるときのように自然にあうんの呼吸が生まれることもないし、何をするにもラクじゃないのですが、一人じゃなくてよかったと思う場面は多々ありますね」(藤川さん)

「日本人がハンドメイドでつくる寿司」として現地の人々にもファンが多い「Fujimi」の寿司 写真/小菅さん提供

レストランの創業を振り返り、小菅さんは「居場所を作りたいという気持ちが仕事につながった」と話す。

「家族や親戚はいても、日本にいるときほど自分の居場所ってここにはないんですよね。その孤独を埋めるためにも心地いいと感じる場所を増やしたくて、レストラン事業に関わりたいと思ったのも、その一環です。現在はタンペレに大好きなサウナをつくるプロジェクトを進めていて、居場所づくりがワクワクする仕事につながっています」