約13年間のOL生活からフリーライターに転身、「どこでも働ける自由」を手に入れ、2020年からデンマーク・フィンランドを拠点に生活する小林香織さんの連載。

ワークライフバランスの良さで知られるフィンランドだが、スタートアップのCEOなど起業家の働き方は日本と変わらないことも多い。しかし、小林さんが現地で出会った日本人起業家の小菅祥之(こすげ・よしゆき)さんは、事業会社の経営と日本食レストランの共同運営を両立しながらも、心地よいバランスの働き方を実現できているという。

日本では伊藤忠商事やアマゾンなどの大手企業に勤め、会社に寝泊まりするほど激務の日々を経験した小菅さんだが、どのように働き方をシフトしたのだろうか。移住後のキャリアチェンジを聞いた。

41歳で移住、起業未経験からのスタート

「この光景がフィンランド人の私にとって、どんなにおかしいことかわかってる?」

小菅さんは、2010年に日本で出会ったフィンランド人女性と結婚。2013年に長男が誕生した。当時、大企業の部署統括として数日会社に泊まり込むような日々を過ごしていた小菅さんは、着替えをバッグに詰めていた際、妻に言われた言葉にハッとしたという。

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「当時は、長男が生まれて数ヵ月。かわいい盛りの子どもがいるのに毎日のように泊まり込みで仕事をするなんて確かに異常かもしれないと気づきました。この働き方を何年も続けるのは無理だろうし、そこからフィンランド移住を検討し始めました」(小菅さん)

移住前、「現地で収入が得られるか」「生活習慣の違いに戸惑うかもしれない」などと悩みを抱えていたが、最終的には気楽な気持ちで移住を決めたそう 写真/小菅さん提供

3年ほど悩んだものの「まずは1年ほど住んでみよう」と、2016年に家族でフィンランド第二の都市・タンペレに移住した。

「当時、私は41歳。企業に就職したら一生起業しないだろうと思ったので、不安はありましたが興味のあった起業の道を選びました。アマゾンなど前職とのつながりを活かしながら、現地企業とコラボして制作したキャラクターグッズを日本で販売したり、現地企業の日本進出のコンサルタントをしたり、おもしろいと思える仕事ができています」

起業未経験、ほとんどネットワークがない状態で移住した小菅さんだったが、現地のアクセラレーションプログラムへの参加や商工会議所から紹介を受けるなどして、チャンスをつかみとっていく。現地では、政府の資金援助により移民のビジネスをサポートする公的機関やNPOがいくつかあり、小菅さんのように国際結婚を機にフィンランドに移り住んだ人や現地で起業した移民を対象に、無料のビジネス講義やコンサルタンティングを提供している。

小菅さんは英語でビジネスを推進できると判断したことから利用しなかったが、移民には半年ほどのフィンランド語の学習プログラムも無償で提供されている。というのも、フィンランドで就職する場合、ほとんどの企業でフィンランド語のスキルが求められるからだ。