豊田章男・トヨタ自動車社長(Photo by gettyimages)

変革を求められる自動車業界で、日本車メーカーは本当に生き残れるか

自動車業界に迫る「CASE」の大波
日々刻々と変化するグローバル自動車産業の変遷、および変化待った無しの日本の自動車産業への提言を記述した現代新書の最新刊『日本車は生き残れるか』。著者の一人で自動車ジャーナリストの川端由美氏は、率直に日本の自動車産業に対する危機感を感じているという。今回は、自動車産業変化の最大のポイントである「CASE」をキーワードに業界の現状を描いた「はじめに」を特別公開する。

GDPの1割を占める巨大産業

「日本の自動車業界は崩壊するのではないか」

そのような言説が、いつのころからか目立つようになった。

いうまでもなく、自動車産業は重工業・電気電子と並んで戦後の経済復興の立役者であり、重工業や家電メーカーが衰退しつつある現在は、日本経済を支える大黒柱的な存在である。日本自動車工業会(自工会)の統計によれば、自動車製造業の製造品出荷額は62兆3040億円とGDPの約1割を占める。全製造業の製造品出荷額に占める自動車製造業の割合は18.8%、自動車関連産業の就業人口は542万人に達する(2018年時点)。

日本のGDPの約1割を占める巨大産業の崩壊など想像もつかない。このコロナ禍の時代にあって、トヨタ自動車など一部のメーカーは、むしろ販売台数を伸ばしており、「自動車業界の危機など大嘘だ」と断ずる業界関係者や専門家も多い。

それでは本当のところはどうなのか。

日本の自動車産業は崩壊しない。ただし、戦い方のルールは大きく変化する。そして、新しいルールに適応できた企業だけが生き残ることができる。

これが本当の「解」である。

 

自動車産業変化の最大のポイント

それではどのようにルールが変更されるのか。ここでは概要だけ述べておきたい。

キーワードは、ここ数年で世界中に広がった「CASE」だ。コネクテッド(connected)のC、自動化(autonomous)のA、シェアリング(shared)/サービス(service)のS、電動化(electric)のEのそれぞれの頭文字をとったもので、2016年に開催されたパリ・モーターショーでダイムラー会長(当時)のディーター・ツェッチェが使った言葉として知られる(世界的にはACES〔autonomous, connected, electric and shared mobility〕という言葉の方が一般的だが、本書では、日本で浸透した「CASE」を使用する)。

「CASE」:
CコネクテッドConnected)
A自動化Autonomous)
SシェアリングShared)/サービスService)
E電動化Electric)

日本の自動車業界では往々にしてE(電動化)やA(自動化)の開発が先行して話題になりがちだが、「C」「A」「S」「E」を並列で眺めていると本質を見誤る恐れがある。

ここで図1をご覧いただきたい。CASEの最大のポイントは、Cつまりコネクテッドによって自動車がIoT(Internet of Things=モノのインターネット)の枠組みの中に組み込まれていくという点なのである。自動車というモノがインターネットにつながると、自動車を取り巻く世界は大きく変わることになる。自動車産業の本当の大変化はそこから始まる。

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